私がしつこく「相続税100%」を主張するワケ

私の経験から言うと、金持ちの子どもは、不動産など親の財産を処分して、介護の質が良くアメニティのいい老人ホームに親を入れてあげようという発想にはなかなかならない。

親が死ぬときには60代、70代になっていて、子どもの教育も家のローンも終わっているはずなのに、それでも親の財産をアテにする。

貧乏な家庭の子ども世代は、ほとんどが在宅介護を押しつけられて、自分の老後はよけい貧乏になっていく。介護のために失業して生活保護を受けている人だっていっぱいいます。

それなのに、テレビは生活保護を受ける人たちをバッシングして、親の財産でリッチに暮らす人たちをセレブと称してもてはやす。おかしいでしょう。

私はいまでも、バブル時代に電車の中で、名門中学の受験生と思しき小学生が、「開成に受かって、東大に受かっても、どうせ家の一軒も建たないもんな」と言っていたのが忘れられません。

バブル期には、都心の土地持ちの子どもはスーパーリッチなのに、東大出のサラリーマンは郊外の狭いマンションを買うのがやっとでした。

私が「相続税100%」にするべきだとしつこく言うのも、この「親の財産を相続するのは当たり前」という考え方を何とかしないと、まともな競争社会は生まれないし、超高齢社会は乗り切れないと思っているからです。

世代間の対立を回避する

私の「相続税100%」というのは、実は生ぬるいもので、親の事業を継承した子どもや親の介護をした子どもの相続税は減免して、それ以外の兄弟の相続税を100%にしろというものです。

家によりつかない子どもや勘当した子どもまで平等相続できてしまう現法とは違って、ある程度、親の側の意思が働くだけ、私はましだと思っています。

現実問題として、農業を継がない兄弟が農地を相続するから、農業を受け継いだ長男が兄弟に地代を払わないといけなかったり、兄弟仲が悪いと、残りの兄弟が相続した土地が荒れ地になっていることが多い。

東京に出てきて農業を継がないとか、ほかの仕事についている人は相続税が100%になれば、おそらく相続放棄をするでしょう。

もう一つ、私が「相続税100%」論を支持する理由は、世代間の対立を回避するためです。

写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

相続税の増税がない限り、消費税は20〜25%くらいまで上がり、所得税と社会保険料は給料の半分近くになりかねません。

そのほとんどが高齢者に使われるということになれば、年金をもっと下げろとか、高齢者の医療や介護は無駄だとかいう話になりかねません。現にそういう気運も高まってきています。