高齢者の暮らしやすい社会はどうすれば実現できるか。医師の和田秀樹さんは「『相続税100%』にして『親の財産を相続するのは当たり前』という考え方を何とかしないと、まともな競争社会は生まれないし、超高齢社会は乗り切れない。相続税100%になり増税がなくなると、世代間の対立も避けられる。そして何より、高齢者がどうせ税金に取られるならとお金を使うようになれば、長引く消費不況が解決すると、いいこと尽くめである」という――。

※本稿は、和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

遺産相続と書かれたブロックと家のミニチュアと電卓
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子離れしないと晩年が不幸になる

「日本って、おかしいな」と私がつくづく感じるのは、わが子がいくつになっても、いつまでも「子ども扱い」をするところです。

80代の親が50代の引きこもりの子どもを支えるために、経済的にも精神的にも強い負担を請け負う社会問題のことを「8050問題」と言いますが、親が80歳になっても、なお50代の子どもの面倒を見ないといけない状況は悲劇としか言いようがありません。

子どもが引きこもりでなかったとしても、親に依存している子どもは少なくありません。

50歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合を「生涯未婚率」と呼んでいますが、2020年の国勢調査によれば、男性は28.3%、女性は17.8%です。

もちろん自活していれば問題はないのですが、実家暮らしで、親がいつまでも面倒を見続ける状況になっている家庭も多いのです。

そうなると親は、「自分が死んだあとも子どもが困らないようにしてあげたい」という心理を働かせてしまい、「子どもにお金を残してあげたい」となる人が少なくありません。

高齢になればなるほど「お金を使っている人」のほうが幸せになれる側面があることは本書で述べていますが、子どもにお金を残そうとして、自分のためにお金を使えなくなっている高齢者が想像以上に多いわけです。