「老後は子どもに面倒を見てもらう」の不幸な結末

子どもにはできるだけのことをしてあげてきたのに、まだ子どもに何か残さないといけないと思う親がいる一方で、いままでこれだけしてやったのだから、子どもに介護してもらいたいと、すっかり子どもに頼りきってしまう親もいます。

親子の関係が密であるために、子どもも親の介護を引き受けてしまいます。在宅介護をすることに決めた子ども世代の中には、親の介護を優先せざるをえなくなって、退職に追い込まれる人が大勢います。

親が80代になっていれば、子どもも結構年を取っているわけですから、体を壊したり心を病んだりする場合もあります。

セラピストに相談する女性
写真=iStock.com/FatCamera
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確かに子どもは可愛いです。可愛いのですが、「一生面倒を見なければいけない」「財産を残さなければいけない」、あるいは「老後は子どもに面倒を見てもらうべきだ」「そのために子どもには嫌われないようにしないと……」といった思考をリセットできないままでいると、親も子も不幸な結末を迎えてしまう事態が起こりえます。

後悔のない人生を送りたいなら、よい意味で「子離れ」をして、親は自分自身の幸せを考えて行動することが大事です。

子どもに関しては、もう少しドライに、「子どもは子ども、自分は自分」と割り切ること。これが、これからの時代においていっそう大切になってきます。

自分のお金は自分の幸せのために使うこと

たとえ、子どもが定職につけないとか、うつ病になってしまうことがあったとしても、本来であれば、社会福祉によって面倒を見てもらうことが原則です。

長年、納税者として税金を納め、社会の側もセーフティネットを整えているわけですから、あまりに何でもかんでも親が背負おうとしなくていいと思います。

それが結果的に、子どもを自立に導くことになりますし、子どもに老老介護をさせて「親子共倒れ」になるというリスクを減らすことにもつながります。

そして、自分のお金は自分の幸せのために使うことです。財産を残しても子どもたちのトラブルの種になるだけですし、お金を持っているがゆえに不幸になるケースを私はいやと言うほど見てきました。

注意してほしいのは、認知症の場合、子どもが勝手に「成年後見」を申請して、それが認められれば、自分のお金でありながら自由に使えなくなるということです。現実に、そういう悲惨な目にあっている高齢者は少なからずいます。

ですからボケる前に「任意後見」という制度を使って、誰に財産を委ねるかを決めておいたほうがいい。子どもだからといって、信用しすぎるのは危険です。