睡眠時間を削っただけの「朝活」は単なる前倒しに過ぎない
もっとも私が知る限り、「滞りがない」という人はきわめて少ないと思います。ほとんどの人が多かれ少なかれ滞りを持ち合わせています。血流がよくなければいけないとは知りつつも、血流の悪い人が多いのと似ているのかもしれません。
ただし、「血流をよくしなければいけない」というのが広く知れ渡っているのとは異なり、滞りが時間管理の大敵であるということは、ほとんど知られていません。
しかも、世間で常識(行動経済学でいう社会的バイアス)と考えられていることが滞りの元凶となることが結構多いのです。
一例を挙げると朝活です。「早起きは三文の徳」というように「早起きすることのメリットは大きい」という考え方があります。
しかし本当にそうでしょうか。確かに朝早く起きてタスクをこなしていけば、一見効率的に時間を活用できるような気がします。
けれども、それは睡眠時間を削って、1日のタスクの処理量を前倒ししているに過ぎないのです。「一生涯、睡眠をとらない」という人が稀に存在するという話は聞いたことがあります。
けれども社会人ならば、平日の平均睡眠時間は約7時間といわれています。睡眠時間にはほとんど個人差もないはずです。きちんと睡眠をとることは健康な生活を送っていくうえには必須です。
したがって、朝早く起きたならば夜早く眠るということになります。人間いつかは必ず起きて、いつかは必ず眠るわけだから、早起きしたからといって、物理的に得をするということはあり得ないのです。
ライフスタイルに合わせた時間の使い方が合理的で効果的
逆に、社会人の仕事が朝9時から始まり、夜6時に終わるならば、そのライフスタイルに合わせた時間の使い方が合理的ということになります。人類は夜行性動物ではないので、早起きするよりも日中の時間を有効活用するほうが合理的だし、効率的なのです。
このように世間の常識には大きなバイアスがかかっていることが少なくありません。
「急ぎではない用事だけど早めにやっておいたほうがいい」「できることはできるだけ早くやっておく」というように前もって早めになんでも処理する人もいますが、そうした人が肝心なときに「時間がないのでできなくなった」という話をよく耳にします。
たとえば、仕事の資料づくりなどで、「あらかじめ仕上げておいたけれども、直前で方針が変わったため、資料をつくり直すことになった」といった経験をあなたもしたことはありませんか。
「何でも前もってやっておくのがよい」といった世間の常識が通用しないケースです。
もっといえば、コロナ禍以降の令和時代、加速するデジタル化のなかで、世の中の常識もバイアスも刻々とアップデートされてきています。これまでの常識が「歪んだバイアスに過ぎない」ということが明らかになってきているともいえます。
とくに滞りをなくすという視点から考えてみると、世の中の常識は古臭いバイアスの塊とさえいえます。
そのためにも、常識を打ち破っていくことで、ムダ、ムラ、ムリのない効率的な時間術を身につけることが重要になってくるのです。