クリエイティブな作業には不向きな短眠

ドーパミンとアドレナリンに突き動かされ「火事場の馬鹿力」を発揮している状態の人間は、目先の課題に集中し、考えられないほどの仕事量をこなすことができます。

一方でこの状態は、周囲を冷静に見渡して冷静な判断を下したり、ちょっとした遊び心で斬新なアイデアを生み出したり、といった仕事には全く向いていません。

テスラやX(旧ツイッター)を率いる天才経営者のイーロン・マスク氏はかつて、睡眠5時間で活動していることで知られていました。しかしある時期から、「判断力や想像力が落ちる」として睡眠を6時間に増やしたのです。

マスク氏ほどの立場になると単に仕事量をこなすだけでなく、全体最適を実現するためのハイレベルな判断や、独創的な発想も不可欠です。

短眠を実践し、後にそれを捨てたマスク氏の決断から、短眠によってもたらされる仕事モードが通用する局面と、そうでない局面があるということがわかります。

写真=iStock.com/efired
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短眠のメリットとデメリット

ただ仕事量をこなすだけの人にならないよう、適当な時期で戦略を切り替え、自身のレベルアップを目指すことも重要です。

私自身の経験でも、短眠の期間は脇目も振らずに最大の出力で仕事に没頭できる半面、細かなミスは増えてしまうことを実感しています。

お世話になっている方への連絡をつい忘れてしまったり、ダブルブッキングをしてしまったりといったことも多く、短眠を長く続けることは仕事上の人間関係に悪い影響を与えてしまう可能性があります。

角谷リョウ『一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略 世界のビジネスエリートが取り入れる「7つの眠り方」』(PHP研究所)

ものすごい効果がある半面、細かなマイナス点があることもしっかり認識して、自分自身で意識的にミスをフォローすることを心がけた方がよいでしょう。

仕事上、信じられないほどの爆発力を発揮できる短眠ですが、このようなデメリットも理解し、安易に使いすぎないことが重要です。短眠の具体的な実践法と、理想的な睡眠環境の整え方については拙著『一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略』でも詳しく解説しているので、ぜひご参考にしてみてください。

ザッカーバーグはその後、短眠を卒業して睡眠の質と量にこだわるようになり、毎晩娘たちを寝かしつける穏やかな生活を手に入れています。短眠は、いざというとき、攻めに徹するときの戦略。続けるのは、長くても3年までにとどめるのが賢明です。

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