1割引きの条件を認めさせる

【TECHNIQUE】“その代わり”になるメリットを提示せよ

自社が商品を購入する側でも販売する側でも、交渉において考えることは同じ。

「その代わり……」を示すことです。

「A社に100円で卸している商品をうちには90円で卸してください。その代わり……」

相手に提示するメリットとして、まず「量」があげられます。競合A社が1個100円で1万ロットを購入しているのであれば、「うちは2万ロット購入するから90円にしてくれ」という具合です。

もう1つは別の商品も購入する形です。商品Xを値引きさせるために商品Yも購入する、いわゆる抱き合わせです。

諸条件を交渉材料に使うことも考えられます。支払いを現金払いにする、支払いの期限を通常より短くする、商品は自分たちで取りにいく、といった条件を示すことで値引きを要求する形です。

取引の継続性も交渉の材料になります。1回切りの取引ではなく年間契約、あるいは3年契約にするという条件を交渉材料にしていくわけです。

何のメリットも相手に提示せず、強気で押していく交渉の仕方もあります。

「A社との取引では100円なのはわかりました。じゃあ、ウチとはいくらで取引してくれますか?」

相手に取引したい意志があれば「では95円で……」と新たな条件を出してくるでしょう。ただし強気の交渉が有効なのは、購入側の選択肢がたくさんある場合です。たとえば家電メーカーのように、多くのサプライヤーが競い合っている市場であれば、「こちらの要求が通らないなら他社と取引する」という腹づもりで交渉に臨めるわけです。

逆に1社の独占市場では、取引できなくなると困るのはこちら側ですから、強気に出るのは難しくなります。

いずれのパターンにせよ重要なことは、「御社の商品が素晴らしいから取引をしたい」という気持ちを前面に押し出すことです。自社の商品が高く評価されれば誰でも嬉しく感じ、積極的に検討しようという気持ちになるものです。

福嶋宏盛
上智大学卒業後、トヨタ自動車、日興証券(現SMBC日興証券)、リーマン・ブラザーズ証券を経て、経営コンサルタントとして独立。『とたんにものごとが動き出す! 頭のいいコンセンサスの取り方』など著書多数。
(構成=宮内 健 撮影=上飯坂 真)
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