欧米の「アンフェア」は「人間のクズ」と同じ意味

さらに検査についても、国の基準よりも厳しい条件で検査していたと説明したことも、責任逃れのように受け取られた。6月の会見では国の認証制度について豊田氏は「このタイミングで私の口から言えない」としたものの、「(制度と実態に)ギャップはある」とも述べていた。ルールは破ったかもしれないが、ルール自体に問題があると言っているようにも感じられたのだ。

自動車雑誌などの専門誌などは、国の基準より厳しい基準で検査を行っていた点に触れ、国交省の頭が固いのだとトヨタを擁護するトーンの記事が掲載された。これに対して、国交省は、判明した不正行為6事例は、国の基準だけでなく日韓や欧州を含む62カ国・地域が採用する「国連基準」にも反しており、欧州などでも量産できない可能性が高いとする見解を公表したと報じられた。

欧米はこの手の「不正」に厳しい。偶然に起きた誤りは許すが、意図的な不正や改竄かいざんは徹底的に追求する。独フォルクスワーゲンの排ガス不正では、これまでに3兆5000億円を超える罰金や賠償金を支払わされた。競争を不正に勝ち抜こうとすることに欧米は厳しいのだ。日本では「アンフェア」という言葉を軽く受け流す傾向があるが、欧米で「アンフェア」と糾弾されるのは「人間のクズ」と言われるのに等しい。つまり、その代償は大きいのだ。

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四半世紀前に起きた問題に酷似している

トップ企業が不正に手を染めていた事実は、日本という国に対する信用度を一気に落とす危険性を秘めている。かつて、1990年代後半に、日本の銀行の信用が地に落ち、金利を上乗せしなければグローバルマーケットで資金調達できない「ジャパン・プレミアム」問題が発生したことがある。バブル期には日本の銀行は世界ランキングの上位を占めるなど金融市場を席巻したが、バブル崩壊によって、日本の銀行などが公表している決算書はまったく信用できない、というムードが広がった。

日本の会計基準や銀行管理の基準がグローバル・スタンダードから食い違っていたこと、また見た目をグローバル・スタンダードに合わせるために様々な操作を行っていたことが発覚。「日本は信用できない」という烙印を押されたのだ。その後、日本は会計基準などをグローバル・スタンダードに合わせることを余儀なくされた。

自動車業界で起きていることは、四半世紀前に起きた問題に酷似している。