受験者数が増えている中学入試。学校側は生き残りのためにさまざまな対策をしている。塾経営者の矢野耕平さんは「私立一貫校のトレンドは、共学化・大学付属校化、さらに高大連携の動きも活発だ」という――。

※本稿は、矢野耕平『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

私立中高一貫校 近年のトレンド①

共学化・付属校化が加速する理由

近年は、男女別学が共学校にリニューアルする潮流があります。

この一〇年だけでも、戸板(女子校)が「三田国際学園」(二〇二五年度より三田国際科学学園、世田谷区)と校名変更するとともに共学化、日本橋女学館(女子校)が埼玉県を本拠地にする開智学園グループになり、「開智日本橋学園」(中央区)として共学化、八雲学園(女子校・目黒区)は校名を変えず共学校に、村田女子(女子校)は港区の広尾学園の姉妹校として「広尾学園小石川」(文京区)という校名となり共学化。それ以外にも東京にある私立中高一貫校の一五校ほどが共学校に生まれ変わっています。

男女別学時代には生徒募集という面で苦戦していた学校が多いように思います。共学化すればターゲットが倍になるのですね。もちろん、共学化すればそれだけで事は上手くいくわけではありません。それらの学校の中には、運営母体そのものを変えたり、校名変更をしたり、それに伴い教育内容を刷新したりして、大きな学校改革をおこなったところばかりです。

生徒募集を考えてというだけでなく、先にも述べた通り、時代に合わせた結果なのかもしれません。

ただ、共学化が行き過ぎてしまい、東京都の男子校の数が相当少なくなってしまったいま(東京都の女子校は男子校の倍以上)、男子校の需要が供給を大きく上回り、軒並み難化する現象が見られます。

そして、もう一つの潮流が大学付属校化です。

少子化が進行しているなか、早い段階で生徒を囲い込みたい大学側と、系列大学の冠を付けることで、生徒募集を成功させたい中高の思惑が一致した結果でしょう。

この一〇年に目を向けると、横浜英和女学院(女子校)は「青山学院横浜英和」として、京北(男子校:文京区)は東洋大学京北として、日本学園(男子校)は明治大学世田谷(二〇二六年以降)として共学化・大学付属校化に舵を切っています。

もちろん、同様のケースは他にいくつもあります。いま脚光を浴びているのが順天(共学校・北区・一八三四年創立)です。学校法人北里研究所と学校法人順天学園が二〇二六年四月より法人合併し、「北里大学附属順天中学校・高等学校」という名称になることが決定しました。北里大学は、医学部・薬学部・獣医学部などを有する名門理系大学。順天が発信のプレスリリースによれば、2026年度大学入学者より北里大学への内部進学制度を準備するとのことです。来春絶大な人気を集めるのは間違いありません。

上、北里柴三郎の肖像が描かれた千円札。下、順天中学校・高等学校のプレスリリース
上画像=iStock.com/petesphotography、下画像:順天中学校・高等学校のプレスリリースより

近年の新たな教育手法

最近のトレンドといえば、新たな教育手法を採択する学校が増えているということです。それらの用語とその簡単な内容説明をしていきましょう。アクティブ・ラーニング……いまはこの表現はあまり使われず、その代わりに「主体的・対話的で深い学び」などと言われています。一方通行ではない双方向的な授業をおこなうことで、グループワークの実施や、生徒からの意見発表などを重んじるものです。

探究学習……生徒が自ら問題設定し、問題解決を図るために情報を収集・分析し、意見を交換したり協働したりして進めていく学習活動のことです。

STEAM教育……Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Arts(芸術)・Mathmatics(数学)を組み合わせた教育手法のこと。学際的な着眼点を育成する狙いがあります。

GIGAスクール構想……創造性のある学びを目指し、『一人一台の端末』と学校の高速通信ネットワーク整備をする構想を指します。

国際バカロレア……グローバルな視野を育成し、海外大学に進学する際に使える入学資格(国際バカロレア資格)を得られるようにする教育プログラムのことです。

保護者世代にとっては聞き慣れない用語ばかりでしょう。インターネットの普及により、海外との距離が一気に縮まるいま、教育の在り方が少しずつ変化しているのです。