「世界第2の経済大国」の陰に隠れていた大問題

それでも、高度成長期には人口増加に伴って経済全体の規模も拡大を続けたため、各企業や組織が自前の仕組みや設備で個別に自己完結していても、その総和がプラスであれば経済全体が成長し、「一億総中流」と呼ばれたように多くの国民も成長の果実を享受している実感することができた。

つまり、「世界第2の経済大国」というステータスの陰に隠れて、1人当たり付加価値の低さは正面から問題視されてこなかったのだ。

しかし、日本の人口減少傾向が明らかになってきた局面では、こうした継続的な市場拡大の前提が崩れる。バブル経済崩壊以降はOECD加盟国内で1人当たり付加価値の順位が下降線をたどり、さらにここ数年は、毎年順位が下がり続け、先述のように2022年には過去最低の31位となった。

主要7カ国(G7)の中では圧倒的な最下位であり、お隣の韓国にも抜かれ、今やOECD加盟38カ国の「下から数える」ほうが早い位置になっている(図表2参照)。

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人口増加をあてにした成長

なぜ、日本の1人当たり付加価値の国際的な順位は「底割れ」するまでになってしまったのか。一人ひとりの日本人の能力や勤勉さが、過去数十年の間に他国に比べて著しく劣化したとは考えにくい。

実は、この期間に日本企業の経営のあり方に根本的な変化があったのだ。こうした変化の背景には、人口減少予測とそれに由来する「成長期待の低下」がある。

多くの日本企業は、高度経済成長期以来、人口増加に伴う市場拡大を前提にして、「いかに良いモノをより安く大量に供給できるか」を競いながら成長してきた。つまり、人口増加に伴う需要増が成長の源泉だった。