カスハラ対策で企業がすべきこと
最近では、消費者の意識も変わりつつあるだけでなく、企業側の対策も始まっている。
JR西日本、東京電力エナジーパートナー、ANAホールディングスなどが、カスハラ対応の強化を発表している。公益性の高い企業が率先して取り組みを進めれば、多くの企業が追随しやすくなるだろう。
法整備を前にして、企業側には以下のような対応が求められる。
2.マニュアル化と、それに基づく社員教育を進めること
3.紛争が起こった際の対応を強化すること
これまでは、苦情対応は現場の裁量に任せられることが多かったが、それでカスハラ防止は難しい。問題のある顧客に毅然とした対応を取るとなると、これまで以上に顧客との紛争は増えることになるだろう。カスハラとどう向き合っていくのか、企業イメージを壊さないためにはどうすればよいのか――そういったことを考える必要がある。
まずは「カスハラかそうでないか」の基準を明確化することが重要だ。次に、その基準に基づいてマニュアル化を行い、それに基づいてスタッフを教育し、マニュアルの浸透を図ることが求められる。
接客は人と人とのコミュニケーションではあるが、属人的になり過ぎると、「以前は対応してくれた」、「別の人は対応してくれた」というクレームを生む可能性もある。
サービスに対する認識をアップデートさせる
顧客が自分の受けた対応をSNSで拡散するリスクも想定しておく必要がある。企業側は、自社の対応の正当性を説明することが必要になる局面も出てくるだろう。最も望ましいのは、音声や動画などの証拠となるような記録を取る体制を作ることだ。
すでに、大手企業では取り組みが始まっている。不当な要求には一切対応しない、悪質なものは警察や弁護士などと連携して法的措置も検討する、といったかなり踏み込んだ対応策も表明されている。
いずれにしても、カスハラに屈しない、クレーマーをつけあがらせないことが重要だ。クレーマーと判断された場合は、それ以上のサービス提供の拒否や、法的措置への移行も検討しても良いだろう。
筆者が知っている案件でも、相次いで迷惑行為を行った顧客を、企業側が弁護士と連携して出入り禁止にしたことがあった。その場では揉めたが、最終的には顧客側が折れざるを得なかった。クレーマーと言えど、大半の人は弁護士を自腹で雇ってまで企業と争おうとまではしないし、不当な行為を行った個人の主張が法的に正当化されることはまずないだろう。
企業イメージ低下のリスクに配慮する必要があるが、今後は早い段階で法的措置を講じることも考えるべきだろう。
一方で、サービスを受ける側も、もはやこれまでと同じクオリティーのサービスを同じ価格で受けることはできないことを理解しておく必要がある。また、不適切な対応を取ると、今後サービスを受けられなくなったり、法的なリスクを抱えたりする可能性もあることも自覚すべきだ。
法整備をきっかけに、企業側と顧客側の両者が、顧客サービスに関する認識をアップデートすることが求められる。