企業の不祥事に対し、SNS上で「不買運動」が起きることがある。桜美林大学の西山守准教授は「不買運動の呼びかけ人は、その企業の『非顧客』であることが多く、効果は限定的だ。企業の行動を変えるためには、SNS以外で働きかける必要がある」という――。

ネット上の不買運動で企業は本当に困るのか

静岡市に本社を構える「いなば食品」が、“ボロ家ハラスメント”や食品衛生法違反報道など、相次ぐ不祥事によって、激しい批判にさらされている。SNS上では、同社の主力製品であるペットフード「CIAOちゅ~る」について、企業姿勢を疑問視する一部のユーザーが「もう買わない」と不買表明をしているようだ。

無心でCIAOちゅ~るを食べる猫
写真=iStock.com/witsawat sananrum
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また直近では、サントリーが実業家・インフルエンサーのひろゆき氏を飲料の広告に起用したところ、ひろゆき氏の過去の言動が疑問視され、SNSで「不買運動」が起きている。マクドナルドについても、CMのタレント起用を巡って「#さよならマクドナルド」というハッシュタグの投稿が散見される。

最近は企業が不祥事を起こすたびに、SNS上で「#不買運動」が拡散する。この実態はどのようなものなのだろうか? この運動は企業にとってダメージを与えるものなのだろうか?

結論を先に述べると、ネットの不買運動は、企業の収益にはほぼ影響しないと言ってよい。

ネット上の運動に限らず、不買運動が企業に与える影響は大きく下記の2つがある。

1.直接的な影響(売り上げの減少)
2.間接的な影響(風評被害、イメージ悪化)

「不買」を呼び掛ける人のほとんどが顧客ではない

1つめの直接的な影響は、個人の不買運動については「ほとんどない」というのが実態である。理由としては、SNSで不買運動を叫んでいる人は、その企業や商品の顧客ではない人が大半であるからだ。

筆者は過去にSNSで不買運動を呼び掛けている人のアカウントを調べたことがあるが、不祥事があるたびに同様の投稿を行っている人、世の中に対する不満を吐き出している人が多くを占めていた。本当に顧客であれば、条件反射で不買運動に走ったりはしないだろうし、SNSに投稿するにしても、もっと建設的な批判をするだろう。

また、大企業であれば、SNSの「不買運動」による売り上げの減少は、全体としては誤差の範囲内程度に収まる。