3年後に真の社長として成長できているか?

もともとスカイスクレイパーのココイチFC店はアルバイトの高校生店長も存在するくらい、パートであろうとアルバイトであろうと、スタッフ全員が店を切り盛りする文化が根付いている。22歳の社長が誕生しても不思議ではないかもしれない。

それにしても、だ。

社長になれば接客だけでなく、財務や経営に関しても明るくないといけないのでは? 諸沢さんにそれができるのか? と意地悪な質問を投げかけてみた。実際に、西牧さんはカレーづくりから経営、財務面まですべてひとりで見ていたトップダウン型の社長だったのだから。

撮影=プレジデントウーマン編集部
諸沢さんの人間性に、社長打診を決意したと西牧大輔現会長は語る。

しかし諸沢さんがすべてひとりで背負うことはないと西牧さんは断言する。

「今、諸沢が社長として何が足りないのかを考えたのです。足りないスキル、たとえば財務、人事、広報などは、その分野のスペシャリストが周囲で支えればいいのです。もちろん、社長として最低限の修業は必要ですが」

その修業の一環として、コーチを社外から招いて、さまざまな勉強会をしている。諸沢さんだけなく、幹部たちも参加して、言葉遣いから目標設定、諸沢さんが不得意な財務諸表の勉強なども含まれる。

「数字の勉強は、もう全然ダメで……泣きたくなるくらい」

と、店舗でキリッと立働く姿とは違って、この時ばかりは少し弱音を吐いた。

そこで西牧さんは会長兼共同代表として3年間両輪で会社を経営して行く予定だという。その間に、西牧さんが諸沢さんに社長業のすべてを伝授していくそうだ。

「3年後には私は代表権から外れて退職する予定でいます。その頃、今現在会社が抱えている借金も完済しているでしょう。無借金で諸沢に渡せるので、経営で大変な時期は過ぎているはず。今はいい人材も集まっているので、彼らのサポートを受けながら、彼女が最終決定を出していくことになります」

世間では「社長は孤独」というが、諸沢さんは常にアルバイトやパート、社員から学ぶ姿勢を貫いている。そして何かトラブルがあっても彼女ひとりで抱え込まなくてもいいかもしれない。イヤなことは寝たらすぐ忘れるし、モンスターカスタマーが来店したら「出禁にします!」ときっぱり。意外に図太い。