仕事の隙間で行う勉強は、やること自体が目的化しがち。何のための勉強かを、常に自問することが大切だ。

社内で最も能力が低いのは、社長

単純業務や複合的業務の遂行能力を測る「エナジャイザー」というテストがあります。人事の参考にするために全社員に受けさせていますが、社内で最も能力が低いのは誰だと思いますか?

小山 昇氏

じつは、社長である私です。数値は、社内で最も能力が高い社員の約半分。単純に言うと、私の能力では優秀な社員の半分の量しか仕事をこなせません。もともと能力が高いほうではありませんでしたが、加齢も手伝って、近年はとくにひどい。

しかし、新しいことを覚えるときは、いまでも私が早い。社員より能力は低いのに、なぜ呑み込みが早いのか。それは、やらないことを決めているからです。私の能力では、何でもかんでも覚えるのは無理。そのかわり大事なものだけ集中して勉強するので、いまだに20代の社員に負けないのです。

たとえば、英語には一切手を出しませんでした。大学は「This is a pen」レベルで卒業できましたが、いまもほとんど変わりません。毎年、海外に研修旅行に行きますが、そのときは通訳を同伴します。不得意なものについては、自分で勉強するよりお金で解決したほうがずっと生産性が高い。

そのかわりに勉強したのはITです。90年代前半は海外に視察に行き、フランスにあるIBMの研究所でデジタルの映画を観たり、バルセロナでインターネットバンキングの仕組みを教えてもらったりしていました。

1990年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)のニューヨーク支店を視察したときは、Eメールを初めて見て驚きました。海外との通信はテレックスが中心の時代ですから、パソコンで文章のやり取りができる技術は衝撃的だったのです。ちなみに口頭で説明を受けたので、私は3年ほど「いいメール」だと勘違いしていた。当時はEメールを知る日本人が少なかったので、しばらく恥をかかずに済みました(笑)。

何度も研修に行ったのは、IT分野が好きだったわけではありません。表計算ソフトは、1980年代にマイクロソフトの「マルチプラン」、ロータスの「ロータス1‐2‐3」に挑戦しましたが、2回とも挫折。3回目にリコーの「マイツール」を学んで、ようやく自分で財務会計の計算ツールをつくれるレベルに達しましたが、基本的に得意でないことは否めません。