財政出動は今回はムリ

エミン・ユルマズ、大橋ひろこ『無敵の日本経済! 株とゴールドの「先読み」投資術』(ビジネス社)

【大橋】でも、中国はリーマン・ショック以降、全国各地に新幹線プロジェクトや高速道路プロジェクトを大規模に展開して、すでにやり尽くしてしまいました。「空気を運ぶ」と言われる交通インフラをつくりすぎたので、これ以上の国家インフラプロジェクトを進めるのは、無理じゃないですか。

【エミン】そう。大橋さんが言われたように、リーマン・ショックのあとに中国は景気刺激策を出して、超大型の財政出動を連発した。今回はそれができないわけです。余力がないのか、それとも習近平的には「潰れそうな“民間”の資本家は潰れてしまえばいい、金持ちを国民の金で救う必要がない」と決めている可能性もあります。

【大橋】通常の国家の舵取りであれば巨額の財政拡張が必要な事態ですよね。中国がなぜ今回景気刺激策を打たないのか不思議ですが、経済のパイが縮小してもイデオロギーが重要ということでしょうか。

中国共産党の支配が揺るがなければOK

【エミン】経済のパイが縮小しても、そのなかで中国政府、共産党が直接もしくは間接的にコントロールしている企業の数が増えていけば、彼らにとっては共産党の支配が揺るがないというメリットにありつける。

中国共産党指導部の視点に立ってみると、中国共産党という組織の存亡を考察する上で、そうした選択はきわめて“合理的”です。それが中国国民のためになっているかは、別の話ですが。

【大橋】彼らが生き延びるには、ですね。

習近平はソ連崩壊を徹底的に研究している

【エミン】そう。彼らが生き延びるために、組織として生き延びるためにやっていることは、驚くほど“合理的”です。

しかも、習近平というリーダーは、ソ連の崩壊を徹底的に研究している筋金入りの人物なのです。絶対にソ連共産党のてつは踏まないと考えているはずですから。

したがって、国の景気が後退しようが、経済が縮小しようが、巨大な民間企業が潰れようが、中国共産党一党独裁が今後も続くのであれば、モウマンタイ(無問題)なのです。

国民の利益、国民の発展がどうかなどは、さほど気にしていません。

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