地元で暮らす人へのヒアリングから生まれた売り場

これらのユニークな売場やサービスは、「無印良品 直江津」の開店プロジェクトのメンバーが、直江津で暮らす人たちを訪れ、直接話を聞いたりするなかで生まれていった。地域にはどのような困りごとがあるのか、暮らしに何が足りていないのか、どのように街が変わっていって欲しいと願っているか。新しい店舗が既存の店舗と顧客を奪い合うのではなく、一緒になって地域を盛り上げていくにはどのようなスペースやサービスが望ましいか。こうした議論のなかから新たな売場やサービスが生まれていった。

無印良品 直江津の「まちの保健室」に併設された調剤薬局(画像=プレスリリースより)

「無印良品 直江津」の開店には、店長に加えてコミュニティマネージャーがかかわっている。無印良品には、店舗のコミュニティセンター化(良品計画では「土着化」という言葉も使われる)を進めるために、店長をサポートするコミュニティマネージャーという職種がある。コミュニティマネージャーは、地域の住民や生産者との交流を進め、共働を通じてともに発展していけるようにつながりをつくる役割をになう。

このコミュニティマネージャーの制度は、「無印良品 直江津」の開店の2年ほど前と、近年になってつくられた制度である。店長とは別に、地元の農家を回ったりしながら、新しいスタイルの売場づくりなどに取り組む責任者を置くことで、新設あるいは既存の店舗のコミュニティセンター化をうながす。こうした活動を先行して進めていたことが、「無印良品 直江津」に結実していった。

オープン後の業績は順調に推移

オープン後の「無印良品 直江津」の業績は順調に推移している。想定以上に広いエリアからの来客があり、当初の1年間の売上げも想定を上回る実績が出ている。「無印良品 直江津」は、国内売上げ上位10%にランクインし、無印良品を代表する店舗のひとつとなっている。こうした手応えが、先に見た良品計画の中期経営計画における、毎年100店舗ほどの出店という強気の目標を後押ししたのではないかと思われる。

また今年4月には「無印良品 直江津」よりも大きい「無印良品 広島アルパーク」もオープンさせている。この場所には約230坪の無印良品があったが、それを約1870坪に拡大。その結果、直江津を抜いて、世界最大の無印良品となった。これも直江津の成功を受けたものだろう。