三大介助業務は完全無人化は難しい

自動化が難しい職種として挙げられるのは医療、介護、建設などである。医療に関して、記録業務や入院患者への説明業務、薬剤や医療材料の運搬作業など雑多な業務の自動化は局所的に進んでいくだろう。また、脈拍や呼吸、血圧などのバイタルチェックや病床の管理業務なども省人化が進みやすい。

しかし、医療の本来業務である患者の容態の確認や日々のコミュニケーション、医療従事者による手技しゅぎの部分は、生成AIロボットなどによる代替は難しいという見解がほとんどであった。

介護に関しても同様に、間接業務の自動化から進んでいく。ただし、三大介助業務と言われる食事介助、排泄介助、入浴介助などの介護従事者の本来業務は、ゆるやかな省人化が進みつつも、根本的に無人化されることは将来においてもありえないだろう。

古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)

建設関連職種についても同様に、管理業務や建機の自動化は進むが、建設作業員が担っているさまざまな作業を構成する細かなタスクの多くで、自動化は今後十数年では極めて難しいというのがおおむね一致した見解であった。

やはり今後、高齢人口のさらなる増加にともなって最も労働力が必要となる医療や介護の職種が、最も自動化が進みにくいという結果である。

生活する私たち、とくに高齢者の暮らしの豊かさに直結する医療や介護において必須の人材を輩出し続けるためにも、社会全体で逼迫する人手不足に対して機械化・自動化を進めることは、日本が持続可能な社会をつくるための大前提なのだ。

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