2月の製造業成長率は13.5%の増加
首相は4月3日、下院で年次経済報告を行い、「昨年の経済成長率は前年比3.6%増で、製造業は同7.5%増だった。今年2月の製造業成長率は13.5%と記録的な数字だ」「供給重視の経済が、インフラを改善し人材を育成する」などと実績を誇示した。
製造業の成長は、軍需産業への国家予算大規模投入が理由だが、「独立新聞」によれば、議員からは、「内閣の仕事は印象的」「ソ連時代にもなかった高成長」といった賞賛の声や、首相続投論が噴出したという。
「深刻な医師不足」「先端技術専門家の欠如」「コンサートホール襲撃テロの不手際」といった批判は、かき消された。
ロシア指導者を採点するSNS「後継者」も4月7日、「エリート層の確執が拡大する中、首相は他の利権グループとの対立を避け、システム全体を機能させ、均衡を保った」と評価し、ミシュスチン首相がポストにとどまる可能性は「100%に近い」と伝えた。
台頭は嫌だが、かといって更迭もできない
実は、「後継者」のサイトは昨年11月、「大統領選後にミシュスチン首相が退陣し、別のポストに異動する可能性が政権内で強まっている」とし、後継首相候補として、①フスヌリン副首相、②ソビャーニン・モスクワ市長、③マントゥロフ副首相兼産業貿易相――ら9人を挙げていた。
「SVR将軍」(3月20日)も、「実力者のパトルシェフ安保会議書記のビジョンには、首相続投は含まれていない」と伝えた。政権内最強硬派のパトルシェフ書記は、長男のドミトリー・パトルシェフ農相の大統領後継を切望し、その一歩として首相に就かせたい思惑があるといわれる。
首相は憲政上のナンバー2で、大統領が職務執行不能になった場合、大統領代行に就任し、3カ月後の大統領選挙を統括する。プーチン氏は71歳とロシア人男性としては高齢だけに、首相ポストの行方は、プーチン後を探る上で重要な意味合いを持つ。
後継者を養成しないことは長期政権の秘訣であり、プーチン氏はミシュスチン首相の台頭を快く思っていない可能性がある。とはいえ、国民や議会、それに中国の支持が高い首相の更迭はリスクを伴う。