学者「なのに」失言を繰り返してきた

今回、川勝氏が大炎上した発言は、すでにご承知の通りだろう。

実は静岡県、県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。

この発言が職業差別かどうか、真意はどこにあったのか、といった点は、ここでは置こう。さんざん報じられているように、川勝氏は、これまで「失言」を繰り返してきたからである。

たとえば、「あちら(御殿場市)にはコシヒカリしかない。ただ飯だけ食って、それで農業だと思っている」(2021年10月23日)や、「磐田(市)っていう所は文化が高い。浜松(市)よりもともと高かった」(2024年3月13日)など、枚挙にいとまがない

オックスフォード大学の博士号を持ち、早稲田大学で教え、地元の大学の学長だったのだから、それこそ「頭脳・知性の高い方」だったのではないか。それ「なのに」放言を連発してきた。有権者や周りをバカにしてきたと受け取られても仕方がない。

にもかかわらず、360万人以上の人口を抱える静岡県民は、彼を15年にもわたって行政のトップに選んできたのだから、よほど騙されていたのだろうか。あるいは、県民にしかわからない川勝氏の魅力があるのだろうか。

そうではない。

彼は失言が多い。「だから」応援されてきたのである。

同じく学者出身の蒲島・熊本県知事

同じ学者出身として、熊本県知事を間もなく退く蒲島郁夫氏と比較しよう。

熊本県の蒲島知事。「くまモンの上司」としても知られる(写真=内閣府 地方創生推進室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

蒲島氏もまた、川勝氏と同じく選挙に強く、初当選以来、4回も圧勝を続けてきた。熊本地震への対応や復興だけではなく、「くまモンの上司」としても名を轟かせ、同県を大いにPRしてきた。

川勝氏が、優れた学者という理由(だけ)で選ばれてきたのではないのと同じように、蒲島氏もまた、前職が東京大学の教授だった履歴(だけ)が、4選の理由ではないだろう。

蒲島氏は、「東大法学部教授になった蒲島郁夫氏の旋回人生」(『週刊朝日』1997年5月2日号)という記事が出るぐらい、一筋縄では行かないキャリアを経ている。高校卒業後に自動車会社に就職し、地元の農協を経て渡米して農業に従事する。ネブラスカ大学からハーバード大学に移り、「日本で政治学者になりたいと思うように」なる、その軌跡は、オフィシャルサイトに詳しい。