学者「だから」に甘えてきた
川勝氏には静岡県経済界の重鎮・鈴木修・スズキ相談役の後ろ盾があったと言われている。巨大自動車メーカーを挙げてのバックアップがあったから、失言があっても、リニア問題で批判を受けても、選挙基盤が揺るがなかったともみられている。ただ、それ(だけ)で、静岡県出身でもなく、テレビで顔を売っていたのでもない川勝氏が、県民から投票され続けたとは考えがたい。
「近代は海洋アジアから誕生した」(『文明の海洋史観』)と大言壮語するような浮世離れした感覚を持っていたから、そうした世間離れした人だと、有権者が寛大に受け入れてきたから、つまりは学者「だから」と大目に見てきたから、川勝氏は今まで知事を続けてきたのではないか。
そして、それゆえにこそ、彼は墓穴を掘ったのである。
学者「なのに」、ではなく、学者「だから」、失言やリニア問題への意固地な姿勢も仕方ない。そんな諦めにも似た県民感情を呼び起こしてきたのではないか。名高く教養にあふれている(ように見える)川勝氏は、静岡県知事の能力にとどまらず、県民のプライドをくすぐって余りあった。
学者「だから」、に甘えてきたために、彼は延命してきた。同時に、そのために、彼は政治家人生の幕を自分で閉じざるを得なかったのである。