「ビッグデータ時代」に活躍するためのスキル

ところで、統計は「過去のデータを整理する」こと、確率は「未来にどのようなことが起こりうるかを考える」ことである。つまり、主に高校一年生で学習をする数学Iの「データの分析」では過去を整理する方法、数学Aの「確率」では未来を考える基本的な方法を学ぶ。その上で、主に高校二年生で学習する、この数学Bの「統計的な推測」では、「統計をもとに確率を考える」ということで、「過去のことを未来に生かす」という手法を学んでいくこととなる。

よく世間では「ビッグデータ時代」などと言われているが、実際に想像を絶する膨大なデータが世の中には存在する。これをうまく利用して、いかに「未来」を予測していけるかどうかが重要な時代となっている。そういった意味では、数学Bの「統計的な推測」は、単に「大学入試で使うから」とかだけではない観点で、学習するべきではないかと考える。

また、「統計」を学習する意味は、「統計的な手法を使えるようにするため」というだけではなく、「統計的に出てきた数値でだまされない/無意識にだまさないようにするため」というのもある。「詐欺をはたらいていると思っている詐欺師は二流以下で、一流の詐欺師は、自分が詐欺をはたらいているとは思っていない」なんて言葉があったりもするようである。

「データにだまされる人」を減らすために

統計的な手法をつかって、プレゼンテーションしていても、その出てきた数値の意味をよくわからず、その上で「自分にとって有利な結論」を導こうとする人はかなりいる。しかもその人は「データの扱い方が間違っている」とは思っていなかったりするのである。

大淵智勝『大淵智勝の 数学B「統計的な推測」が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)

最初に書いたハロウィンについてのプレゼンをした方がまさにそれであろう。そういうときに、統計的な手法が何を意味するのかなどを分かっていれば、そういったプレゼンテーションを聞いても「これは本当なのか?」と冷静に対応できるようになるわけである。

ということでいえば、私が期待しているのは、数学Bの「統計的な推測」を学習する人が多くなることで、「データにだまされる人」が減ってくれることと、「無意識のうちにデータでだましてしまう人」が減ってくれることであったりする。

最後に、新しい分野が入ってくるということには抵抗感が否めないところがある。しかし逆に、新しいことを身につけることによって、より広い視野を身につけられると考えるのがよいのではないかと思う。

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