引き続き中国との「取引」の材料になる北朝鮮

トランプ第1次政権が大きな労力を払いながら、ついに何も成果を出せなかったのが、北朝鮮との関係だ。経済的インセンティブなどを見せながら核兵器の放棄を求めたトランプ大統領に対し、金正恩はそれなりの対応はした。少なくとも、アメリカの大統領に異例と思える真面目な対応はした。かし、それでも安全保障政策を変更するところまで説得されることはなかった。

※写真はイメージです(写真=平壌冷麺/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

注意すべきは、かつてトランプ大統領が、在韓米軍の撤退の可能性も視野に入れた交渉態度をとろうとしていたように見えたことだ。

もっとも一気に全面撤退することは、さすがのトランプ大統領でも難しかった。アフガニスタンでは、トランプ大統領は、撤退の約束をタリバン側と取り交わすところまでをなした。ただし実際の全面撤退の負担はバイデン政権が背負うことになり、結果としてバイデン政権が無残なアフガニスタン撤退の責めを負うことになった。アフガニスタン情勢のその後の推移も見ると、トランプ第2次政権がもし登場したとしても、あまりに安易な在韓米軍の撤退までを行うことはないように思われる。

しかしそれにもかかわらず、引き続き朝鮮半島は、東アジアにおける安全保障の「取引」の材料になりうる。中国の北朝鮮に対する影響力をいでいきたいという考えを、トランプ氏が持つとは思えない。また、北朝鮮が良好な関係を持つロシアとの関係は、トランプ氏は好転させていくはずである。

むしろトランプ氏は、安全保障問題にアメリカを深入りさせることなく、韓国の自主防衛能力の向上を求める方向で、あるいは日本にも関与を求める方向で、朝鮮半島でのアメリカの軍事的関与の度合いを減らす可能性を模索するのではないだろうか。