地元の県立高校に通うくらいのお金で留学できる

――全国に広がるまでに何年くらいかかりましたか。

【岩本】高校魅力化をプロジェクトとして立ち上げたのが2007年度からで、2015年から島根県内での展開を始めました。全国に展開するようになったのは2019年からですね。そのために「地域・教育魅力化プラットフォーム」という財団を作りました。

――資金や人手はどうしたんですか?

【岩本】じつは島留学の取り組みが、「日本財団ソーシャルイノベーションアワード2016」で最優秀賞をいただきまして、日本財団から3億円の支援を受けられることになったんです。それを活用させてもらいました。

――最初は日本財団からの3億円があったにしても、その後はどういう形で運営しているんですか。

【岩本】だいたい4階層になっています。

第1レイヤーが、地域みらい留学に参画する市町村です。そこから出していただく参画金というのがあります。第2レイヤーは都道府県教育委員会。第3レイヤーは国ですね。内閣府、文部科学省、経産省など、教育改革や地方創生的なことをやっている官庁からの予算。第4レイヤーは地域みらい留学の理念に共感し、応援したいと言ってくれる個人や企業などからの寄付です。主にその4つの組み合わせですね。

――予算の規模はどれぐらいですか。

【岩本】いまは全体で約4億円で、地域みらい留学の参画金で1億強、都道府県が1億弱。国まわりが1億。寄付が1億ぐらいです。

――バランスがいいですね。

【岩本】潤沢ではありませんけど、なんとかやってます。安定して持続的に経営していくことを考えると、参画する市町村や高校の数が増えて基盤が厚くなっていくのがいいのかなと考えています。

たえず新しい仕組みも研究開発しようと思っていますし、そこで生まれたものを市町村や高校に使ってもらって、参画するところがさらに増えていくというのが理想ですね。

――留学する高校生や保護者はどのくらい費用を負担するのでしょうか。

【岩本】県立高校にいく学費と、実費は寮費を含めて月3万~6万円程度です。地方は生活コストが安く、また市町村などからの支援もあり、都市部で育てるよりも安く済むと思います。

「越境の自由をすべての高校生に」

――「留学」としてはかなりリーズナブルですね。

【岩本】これまで高校で越境体験をするには、海外留学や私立の全寮制ぐらいしか選択肢がありませんでした。相当に高い学力があれば奨学金という手もありますけど、いずれにしてもかなりハードルが高いものでした。

でも、地域みらい留学で行くのは公立ですから、学費は地元の高校に行くのと基本的に変わりません。それが公教育のなかでやっている意味なんです。

――子どもたちは地元の高校に進学するのと同じように、地域みらい留学に参画している各地の高校から好きなところを選んで受験すればいい。

【岩本】そういうことです。人は生まれる場所を選べませんよね。だけど、学ぶ場所は誰もが自由に選べるような時代にしたい。「越境の自由」をすべての高校生に――というのが僕らの理念なんです。

撮影=塩田賢二
一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事 岩本 悠