留学生だからわかる地方の魅力
――地域に出て活動することが「地域みらい留学」の特徴になっていますが、それは初期の段階からあったのですか?
【岩本】最初に島留学を受け入れた時期が、ちょうど隠岐島前高校で地域をフィールドにした学びを始めていこうというタイミングだったんです。
僕がやっていたのは、子どもたちにどんな力を付けてもらいたいのかを学校の先生や地域の人たちと話し合って、そのための環境を作っていく仕事ですね。地域を舞台にした「探究的な学び」みたいなものをどう作っていくかという。
それで、留学生と地元の子がいっしょになって、新しい観光企画を作る活動を始めました。それが第1回の観光甲子園でグランプリに選ばれたんです。
「ヒトツナギ~人との出会いから始まる君だけの島前三島物語」という企画で、都会の高校生と島の高校生がペアになって島前の暮らしをいっしょに体験するというものでした。いわゆる観光名所よりも、島に住む人たちと出会うことこそが最高の観光なんだというのがテーマだったんですけど、それは地元の子たちだけでは考えつかなかったと思うんです。
――なるほど、カルチャーギャップをうまく活用したわけですね。
【岩本】地元の子たちからすると、「え⁉ そんなのあたりまえじゃない」みたいなことが、都会の子から見ると特別なことだったりする。その子は「人のつながりの大切さを感じた」と言っていました。失恋したときも、地域のおばちゃんがその日の夕方にはそのことを知っていて、そっとパンを渡してくれたとか。そんな話もしてましたね(笑)。
人と人とのつながりのなかで、彼は自分のなかにエネルギーが湧いてくるのを感じたそうです。それで「人とのつながりを体験できるような観光企画を作ろう」という話になった。しかも、彼らはプランだけじゃなくて、実際にツアーも実行した。それに参加した中学生が、「自分もここで何かやってみたい」と言って入学してきたりして、「ヒトツナギ部」という部活になりました。
島の子に芽生えた誇り
――外からの刺激を受けて、自分たちの島を再発見したり、新しい部活が始まったり。地元の子たちにもいい影響がありそうですね。
【岩本】島の子はいままで都会に憧れたり、劣等感を持つこともあったと思うんですけど、自分たちの島について「自然がきれいだ」「人と人のつながりがいい」と言ってもらって、地域の価値を再認識して、誇りを持つことができるようになった。それは大きいと思います。
もうひとつ、学業の面でも変化が起きました。地域の中学校で一番勉強ができた子より、留学してきた子のほうが勉強ができたんですよ。それが刺激となり、切磋琢磨が起きて、その学年は国公立や難関大学に行く子の割合が上がったんです。