わが子が「不登校」になったら、どうすればいいのだろうか。関東の公立中学に通っていた坂木健斗くん(仮名)は、中学2年のとき、突然学校に行けなくなった。本人も両親も戸惑ったが、離島の県立高校に「留学」したところ、生徒会長になるほど学校になじんだ。いまジワジワと広がる「地域みらい留学」という取り組みについてリポートする――。(第1回/全4回)
進路に迷っていた時に出会った「地域みらい留学」
坂木健斗くん(仮名)は、関東の公立中学に通う、ごく普通の中学生だった。部活は陸上部に所属。勉強もがんばっていた。それが中学2年生のある日、突然学校に行けなくなってしまった。
「いじめられたり、嫌なことがあったわけではなくて、なんとなくクラスになじめなかったというか……。ある朝、急に起きられなくなってしまったんです。体に力が入らなくて、いままで普通にできていたことが何もできなくなって、一日中寝ていることしかできなくなってしまいました」
学校に行きたい気持ちはある。勉強も部活もしたい。でも、体がついてこない。「なんで学校に行けないんだろう」。自分を責めることで、さらに体が重くなっていった。
不登校といっても、理由や状況は人それぞれ。彼のように原因がはっきりしない場合、本人も周囲も余計に戸惑い、苦しむことになる。
健斗くんの両親は最初、「さぼりたいだけなんじゃないか」と疑い、むりやり学校へ行かせようとしたという。でも、本人はどうしても起き上がれない。親子でもがけばもがくほど、事態は悪化していった。
「家族とか友達からもいろいろ言われるし、自分でもわかっているんだけど、動けない。本当にあのときは地獄でした」
両親が医師に相談したところ、「これ以上、子どもを追い詰めて、来年まで生きていてくれるでしょうか?」と言われたという。それを機に無理に学校へ通わせようとすることはやめ、健斗くんの心の回復を待つことにした。
結局、3年生になっても不登校は続き、高校をどうするか考えなければいけない時期になった。しかし、授業に出ていないため内申点が悪く、地元で入れそうな学校はほとんどない。選択肢が狭く、ピンと来る学校はなかった。
どうするか困っていたとき、親子が出会ったのが「地域みらい留学」だった。