「ミッションでは飯が食えない」と言われるが…

でも皆が共感しているミッションをより達成するためだと考えれば、良いのです。経営者としてこのスッキリ感がとても大切だと思います。決して株価を上げたり、自分の給料を上げたいために言っているのではないということです。

また利益はその効率だと思っています。同じ面積(=売上)でも、会社によって利益が違います。利益をしっかりあげているということは、より少ない資源とより少ない労力で同じ売上(ミッションの達成度)を達成していることで、とても効率が良いことになります。それだけでも社会貢献と言えるのではないかと思いました。

私が日産にいた時、大衆車のサニーと同じ価格帯のトヨタのカローラでは、カローラの方が原価が10万円安いと言われていました。もしサニーとカローラが同じ性能・品質だとすれば、トヨタは日産より少ない原材料、少ない労働力で同じ車を製造していることになります。私はそのこと自体社会貢献ではないかと考えていました。

「ミッションでは飯が食えない」

そんな声も聞いたことがあります。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に沿った経営が大切だと書きました。では利益は? もちろん大切です。企業は世の中を良くするためにあるのですから、その大前提としては「存続する必要」があります。つまりMVV経営の大前提は継続する(Going Concern)ことです。つまり利益は目的ではなく、存続するための手段なのです。

ミッションも進化させなければならない

ではどれくらいの利益が必要かといえば、ドラッカーの言っている「最小利益」を目指すのです。ではその最小利益とは? お客様に価値に見合った適正な価格で商品を提供し、従業員に適正な給料を払い、取引先から適正な価格で商品を購入し、適正な税金を納め、最後に株主に適正に配当して残った利益が最小利益です。

岩田松雄『共感型リーダー まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法』(KADOKAWA)

企業の成長のために、将来に対して適切な投資ができる適正な内部留保も必要です。社会の公器として、いわゆるステークホルダーと(将来も)適正に付き合っていくための利益です。ミッションと株価、短期と長期など一見相矛盾することに「折り合いをつける」ことが経営者の仕事です。

創業間もないベンチャー企業以外のほとんどの企業には、すでに経営理念に類するものは存在していると思います。しかしその浸透具合には大きな差があります。また、環境の大きな変化、例えば人口構成や社会の大きな変化、科学技術の進展あるいは、自社の予期せぬ大きな成功(失敗)によって、MVVを見直す必要があれば変更しなくてはなりません。つまりMVVも進化させなくてはならないのです。

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