「大量出店戦略」で陥りがちな罠

お店をどんどん増やせば、トータルのお客様の数は増えます。しかし採用や教育が間に合わず、お客様へのサービスが落ち、お客様に不快感を感じさせてしまったら、むしろミッションに反する方向になってしまいます。

ボックスBのようになって結果的に現在のボックスより面積が小さくなってしまいます。急成長しているベンチャー企業などでありがちな事例です。最近で言えば立ち食いのステーキチェーン店がまさしくそうでした。肉も満足に切れない人がお店に立っていました。人の成長(教育)が間に合わないのです。

実際感動を与えられる人数を増やすには、店舗を増やせば確実にお客様数は増えます。日本中の人がスターバックスの開店を待っていました。そのため「全県制覇」をひとつの方針として推し進めました。時には、「(予想)投資収益率」の目標水準を満たしていなくても、出店を推進しました。スターバックスを待っている人は多くおられる。投資収益率より大切なことがあると思いました。

「ゆっくり過ごせる」空間が単価アップにつながる

一方、感動をより深くするには、店舗のサービスを充実させることが必要です。「感動の深さ」は、お客様の満足度と置き換えても良いでしょう。

ですから店舗数の拡大のみならず、無償Wi-Fiの導入、コンセント数の増大、一人席の拡充など、ミッションである「心に活力を与える」ための、さまざまなアイディアを実現させました。スターバックスの商品が他社のコーヒーチェーンより多少割高で買っていただいているのは、他社よりも感動が大きいからだと思います。つまり「感動の深さ=単価」なのです。

このボックスの面積こそが「単価×お客様数=売上」なのです。ボックスの面積を増やすことが、ひいてはミッションをより実現することにもなり、それは売上にもリンクしているのです。ですからもし売上が落ちているなら、何か間違っているのです。ボックスCの方向に向かって成長しないといけないのです。つまり売上はミッションの達成度を表しているのです。

私はこう考えると経営者としてとてもスッキリしました。「なぜ成長しなくてはならないか?」という問いに対して、「自分たちの素晴らしいミッションをより達成したかどうかの指標は、売上で測れるから」と答えられます。当然成長するためには色々な部署に負荷をかけなくてはなりません。