内部文書で判明した中国警察の監視システム
中国のウイグル人に対する人権侵害は、いまや世界中に知れ渡っている。中国当局によって「再教育」と称して強制収容され、強制労働や拷問などが行われたのは、すでにのべ100万人を超えているとみられる。中国当局によるウイグル人迫害は凄まじいものだが、では中国当局はそもそもどのようにウイグル人の住民たちを監視しているのか。その詳細を記した中国警察当局の内部文書が流出したので、その概要を紹介したい。
これは、米情報サイト「インターセプト」が2021年1月29日に公表したレポートで詳細に紹介された、新疆ウイグル自治区とその中心都市であるウルムチ市の公安局のデータベース内の文書である。流出した内部データは、52ギガバイトもの大量のデータであり、約2億5000万行の文書を含んでいる。同データベースに使われているソフトは、セキュリティ企業「ランダソフト」が開発した「iTap」というデータ管理システムである。ランダソフトは上海の民間企業である。
インターセプトでは、その膨大な内部報告書から、いくつかの具体的な監視活動例をピックアップして紹介している。たとえば、ウルムチ市の警察自動化システムがあるケースで「情報判定通知」と呼ばれる命令を傘下の警察署に出していた。その経緯は以下のように説明されていた。
きっかけは「微信」で申し込んだグループ旅行
まず、警察当局が過激派とみなす人物の親族の女性が、中国国内で広く使われているスマホのメッセージアプリ「微信(WeChat)」を通じて、雲南省への無料旅行を申し込んだ。その女性が見つけたのは、“トラベラーズ”というグループが募集したものだった。
警察はそのトラベラーズというグループに注目した。なぜなら、そのグループには、ウイグル人、カザフ人、キルギス人などのイスラム系少数民族の人々も200人以上含まれていたからだ。根拠はそれだけだが、ウルムチ市の警察は監視対象と判断した。情報判定通知にはこうある。
「彼らの多くは、強制収容されている者の親族である。最近、多くの情報により、過激派の親族が集結する傾向が明らかになっている。この状況には大きな注意が必要である。この通知を受け取ったら、すぐに調査せよ。トラベラーズを企画した者たちの背景や動機、活動の内実を調査すべし」