姉の宗教活動を理由にウイグル人男性を検挙

この命令を受け取ったある警察署が、内部捜査をして報告書にまとめている。それによると、同署は一人のウイグル人を検挙している。しかし、警察署の報告書によれば、その人物は過去に犯罪歴はなく、中国国内を旅行したこともなかったという。

しかし、彼の携帯電話は没収されて警察の「インターネット安全ユニット」に送られて解析された。また、彼は「管理・監視」対象と決定され、それにより、政府が任命した地元の人物が彼の家庭を定期的に訪問して報告することとされた。そして、彼に関するすべての記録は、警察の自動化システムに登録された。

警察がこの人物を検挙したのは、5カ月前に長姉が宗教活動をしていたからということだった。その宗教活動というのは、この長姉と夫が別のウイグル人の夫婦を家に招待した際に、メッセージアプリ「テンセントQQ」の宗教討論グループに誘ったということだ。

姉夫婦は消息不明、勧誘された夫婦は強制収容所へ

それにより、この夫婦はノートパソコンを購入し、毎日午前7時から午後11時30分までグループにログインし、夫はタバコと酒をやめ、妻は丈の長い服を着るようになった。警察はこの2組の夫婦を逮捕し、168の宗教的な音声データファイルを没収した。これは、預言者ムハンマドが生きていた頃のイスラム教を実践することを提唱するイスラム運動「タブリーギ・ジャマート」に関連するものだったらしい。その後、この長姉と夫の消息は不明で、もう1組の夫婦は強制収容所に入れられたことがわかっている。

インターセプトが入手した公安部の内部データには、警察内部の情報ファイル、警察での会議記録、町中に設置されている公安部の検問所の記録なども含まれている。さらに公安部による電話、ネット、金融などの監視についても詳しい内情が記されている。そして、こうした内部データからは、公安部が「過激派の監視」と称して行っている住民への監視活動が、単にイスラム教徒社会の宗教的な活動を調べているだけであることがわかるという。

また、このデータベースからは、公安部の情報分析の手法もある程度わかる。たとえば、収集した情報を自動化された取り締まりソフトウェアにかけることで、前述したような旅行グループを監視対象と浮き上がらせるなどといったことだ。