カジュアル路線化で既存の職人客から上がる不満の声

まとめると、4月~9月の半年間は、客単価が上がっているのに、客数(買い上げ客数)が減ったために、前年売上高実績に届かなかったということです。これはなかなか危険な兆候です。それだけ既存顧客が離れているということにほかならないからです。

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もちろん、ワークマンの現在の勢いはすばらしく、巨大なベイシアグループの一員ですから、経営危機の心配はありません。冒頭に述べたように足元に陰りが見え始めたという程度にすぎません。

ちなみに11月6日に発表された24年3月期第2四半期決算(23年4月~9月)は営業総収入が655億8000万円(対前年同期比8.9%増)、営業利益119億9100万円(同1.4%減)、経常利益122億6000万円(同1.4%減)、当期利益76億500万円(同1.9%減)と増収ながら微減益に終わっています。営業総収入は順調に増え続けていますが、実は23年3月期決算から現在まで減益傾向が続いています。

なぜワークマンから既存顧客が離れつつあるのか。考えられる原因のひとつは「職人客離れ」です。

ワークマンの元々の店舗は幹線道路沿いや郊外に立地し、個人経営の小規模なフランチャイズがほとんどでした。そこに買いに来る職人客も店舗ごとにほぼ決まっており、着古しては定期的に買いなおすという購買行動だったと考えられます。

カジュアル色を強めたことによる弊害

しかし、近年のカジュアル用途でのワークマン人気の盛り上がりによって各店舗にカジュアル客が押し寄せ、店内が混雑していたり、駐車場に車が止められなかったりということが増えました。また、カジュアル需要の急増によって品切れ・品薄状態も増えました。こうしたことが不満となって職人客離れが起きつつあるようです。

ワークマンは作業服をカジュアル向けにも販売することで業績を伸ばし続けてきました。作業服は元来「安さ」と「高機能性」を兼ね備えた衣料品です。商品デザインを少し工夫することでデイリーカジュアル用途の客が増えると考えて、作業着客とカジュアル客の両方に同じ商品を売ることで成長を実現してきました。

また、作業服はカジュアル服と比べて流行に左右されず、供給サイクルを長めに設定することができるため、他のカジュアルブランドのように売れ残り商品を大急ぎでシーズン末に投げ売り処分することなく、作業服店で値下げせずに売り続けることができるというもくろみがありました。

しかし、成長に次ぐ成長を遂げるに従って、カジュアル色を強めたワークマンプラス、ワークマン女子、ワークマンカラーズなどの業態を派生させて今に至ります。おそらくは作業服店には置けないようなカジュアル向けの品番数も相当に増えているのではないかと考えられます。

出典=PR TIMES/株式会社ワークマン