一人500USドルの価格帯で勝負できるか
ツアーでいろいろな都市を回りながら、その都市の可能性を肌感覚で掴んでいく必要がありました。
美食の街パリも、そこまでの高単価な店が数多くあるわけではありません。イタリアでもミラノぐらい。スペインではマドリード以外は難しい。
デンマークのコペンハーゲンからもオファーをもらいましたが、大きなハードルがありました。デンマークというのは、とても税金が高いのです。税金を加味した金額を、多くの人に落としてもらえるかどうか。疑問符がつきました。
僕らの価格帯は一人500USドルがアベレージです。この金額を出せるか出せないか、ここが大きなポイントとなりました。
欧米を強く意識していた中で、僕は最終的にまずはアジアに出すことを決断します。まずは地の利。アジアのほうが近いからです。お店で使うための和牛の輸出という観点でも、僕の物理的な移動という観点でも、魅力があった。
そしてアジアで金融都市といえば、香港。富裕層がたくさんいる中国の玄関口というイメージもある。グローバルでやっていくとき、この場所は理想なのではないかと思いました。そして何よりも香港は食の都、そして日本に旅行でやってくるローカルが多い。
香港の食通の日本食理解度は、はっきりいって日本人でもかないません。それぐらい日本食についての造詣が深い。ここもショートカットできるポイントとしては大きかった。
香港を選んだ理由はビジネスパートナーの存在
ただ、香港を選んだ最も大きな理由は、パートナーとの出会いです。ジェラルド・リー。ニックネームでジェロと呼んでいます。香港で、当時カフェチェーンを10店舗ほど展開している元弁護士の若き起業家でした。
彼がインスタグラムで和牛カツサンドを見つけて、「コラボレーションをしたい」と言ってきたのです。ただ、僕はカフェにカツサンドを出すつもりはありませんでした。そこで、難しいと伝えると、わざわざ日本まで飛んできて、僕に会いに来てくれたのでした。
その後、今度は僕が香港に会いに行って、いろいろな話をしているうちに、年齢が近いこともあって仲良くなりました。
そこで聞いたのは、なぜ彼がコラボレーションをしたいのか、でした。彼は上場を考えていたのですが、事業ポートフォリオを戦略的に考えたとき、日本の有名な食ブランドを入れておきたいと感じるようになった、というのです。それも新しいブランドを持ってきたい。
これまでやってきたのは、すべて自分たちのプライベートブランド。そんな中で、初めての海外コラボレーションに、日本で最もクールなブランド、WAGYUMAFIAを担ぎたい、ということでした。