総統選挙のためだけに世界中から帰国する

ともあれ、統一地方選挙と、総統・立法委員選挙が台湾の主要選挙となります。

台湾の選挙の特長は、非常に熱気があって投票率が高いことです。実際、2022年の地方選挙でも66%、2020年の総統選挙では75%。過去には80%だったこともありました。もちろん、選挙の数カ月前からメディアも選挙報道一色になります。

日本の選挙制度と大きく違うのは、在外投票もできず、期日前投票もできないところです。自分の生まれた場所、戸籍がある場所でしか投票できないんですね。ですから、選挙の時期には、いわば民族大移動のような状況になります。日本や海外から、投票のために帰国する人もたくさんいます。総統選のときなど、投票日前日の台湾行きのフライトは、選挙のためだけに帰国する台湾人たちで予約がいっぱいになります。

私も台湾の人たちと長く仕事をしていますが、選挙前の1カ月はほとんど仕事の話ができません。なにせ、街中を候補者が歩いていて、道路ごとに選挙事務所があるくらいの勢いですから、多くのビジネスもストップしてしまう一大イベントなんです。

よく政治のことを「まつりごと」といいますが、まさに台湾は、この選挙の時期に台湾全土を巻き込んだお祭り騒ぎともいうべき状況になるのです。低い投票率が続く日本の選挙が欠いているのはこのお祭り感覚かもしれませんね。

「台湾アイデンティティ」を押し出して民進党が台頭

台湾は民主化以降の選挙で、二大政党──国民党と民進党の間で、頻繁に政権交代が起こるようになります(図表2)。

出所=『台湾の本音

民主化していくなかで、当然人々は自分の素直な考え方に基づいて生きていくようになります。そして「台湾は台湾だ」という台湾アイデンティティを前面に押し出した民進党にシンパシーを持つ人たちが多くなり、勢力を拡大していきました。