その可能性を大きく裏づけたのが、民放公式テレビ配信サービス「TVer」におけるドラマの再生数の実績である。最新の2023年10~12月期の総合番組再生数ランキングでは、上位10位に入っているバラエティは7位の「水曜日のダウンタウン」だけでそのほかはドラマの独占状態である。「セクシー田中さん」も5位にランクインしている。

また、上位6作品が総再生数2000万回以上を記録し、ドラマの快進撃が目覚ましい。地上波中心のビジネスでは赤字であったドラマは、配信によって“日の目を見る”ことができたコンテンツなのである。

海外マーケットでも日本のドラマは熱い視線を浴びている。毎年、フランス・カンヌで開催される世界最大級のテレビ見本市MIP(春はMIPTV、秋はMIPCOM)では、日本の経済産業省、総務省、文化庁の後押しもあって、多くの日本のドラマが世界中のバイヤーから買われている。そんな現状からいま、テレビ局はドラマ多産化を推進しているのだ。

「ドラマ偏重主義」が歪み、ひずみを生み出す

直近の2024年1月クールで放送の各局(系列制作を含む)「プライムタイム」と「深夜枠(23時以降)」の連続ドラマの数を挙げてみる。前者が「プライムタイム」で後者が「深夜枠(23時以降)」である。

NHK 3+0=3枠
日テレ 3+3=6枠
テレ朝 4+4=8枠
TBS 3+2=5枠
テレ東 1+8=9枠
フジ 5+2(FODの再放送を入れると3)=7(FODの再放送を入れると8)枠

全局足すと、なんと38(FODの再放送を入れると39)枠にも至る。

そしてそのドラマ多産化現象は、「ドラマ偏重主義」を助長している。当然そこには、「歪み」や「ひずみ」が生じてくる。

各局の制作現場は原作探しや、主演キャストの押さえ、脚本家の確保、スタッフィングの調整に日々追われることになるからだ。私がプロデューサーをやっていたドラマでは、制作会社が見つからずに一時期は企画がポシャりかけたこともあった。

特に、原作やキャスト、脚本家に関しては激しい争奪戦が繰り広げられる。これも自著で詳しく述べているが、そのため主演キャストは局と有力芸能プロダクション間の「握り」によって数クール先まで「ベタ置き」されるという状況が生じてくる。

脚本家においても同様だ。優秀な脚本家は少ない。ものすごいペースでドラマ制作を進めなければならない状況下においては、大御所で手間のかかる脚本家は厄介なだけだ。ドラマ多産化の流れの中で、“使い勝手のいい”脚本家が重用されるのは自然の淘汰とうたである。

テレビ局が重用する「脚本家」と「原作者」

では、「“使い勝手のいい”脚本家」とはどんな脚本家なのか。

それはズバリ、局やプロデューサーの都合を聞いてくれる脚本家のことだ。

だが、“都合を聞いてくれる”というのは、“言いなり”という意味ではない。信頼関係を築き、お互いを信じているからこそ、その時々の事情を瞬時に理解して、“適当に”対応してくれるのである。プロデューサーはだいたいそんな脚本家とタッグを組むことが多い。私にも何度もタッグを組んだ脚本家が何人かいた。