「圧倒的な安さ」と「誰にでもウケる味」

「ZAO SODA」はなぜ消費者の心をつかんだのか。

最大の理由は「圧倒的な安さ」と「誰にでもウケる味」の2つだ。

「ZAO SODA」の1本あたりの価格は、時期やキャンペーンによって多少変動するが、およそ50~60円。スーパーやコンビニの炭酸水の価格は100円程度が相場であり、LDCは3~4割程度安い。同社SCM本部長の橋本知久さんは「安さの秘訣ひけつは『脱付加価値戦略』と『徹底したコストカット』です」と自信をのぞかせる。

写真提供=ライフドリンクカンパニー
写真提供=ライフドリンクカンパニー

 

 

大手飲料メーカーとは真逆を行く「脱付加価値戦略」

「脱付加価値戦略」とは、性別や世代など、特定の層にしか刺さらないようなユニークな商品で差別化を図るのではなく、特徴がない代わりに万人受けする「王道」を目指すというものだ。

これは大手飲料メーカーの「独自の商品価値を模索し、消費者に手に取ってもらおう」という戦略とは真逆と言える。

キリンビバレッジの吉村透留社長は23年の事業方針発表会で「価格だけの価値ではなく、付加価値での戦いを挑み、飲料メーカーとしての存在価値を高める」と発言している。アサヒ飲料も「高付加価値化商品の強化に取り組む」ことを事業方針に掲げ、「健康」「無糖」などの付加価値を追求していくとした。当然、新しい商品を開発しようとするとそこには費用がかかる。

一方、LDCの炭酸水は炭酸水の「ど真ん中」を徹底的に追求する。

「私たちはスタンダードな炭酸水を売りにしています。現在のトレンドは強炭酸です。しかし強炭酸の商品の中には飲むと喉が痛くなるようなものもあり、そういった商品は女性や子ども受けがよくありません。炭酸の強さをちょうどいい具合に調整することでスタンダードを狙いました」(橋本さん)

「スタンダード」の追及には、PB商品の製造ノウハウが役に立った。PB商品の売りは何と言っても、味や見た目がシンプルな点にある。LDCの「脱付加価値戦略」にドンピシャだった。

「炭酸水一つを取っても、合う水、合わない水があります。『ZAO SODA』の場合は、天然水ではなく、炭酸の強さにちょうど合う硬度に水を調整して使っています。一見するとただの炭酸水ですが、細かな工夫をしています」

写真=iStock.com/rai
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