円安が大きく進んだことも背景にある
もうひとつ大きいのが「通貨価値の下落」だ。円安が大きく進んだために、ドルベースで見たGDPは小さくなる。GDPのランキングは各国通貨の統計数字をドル換算したもので比べるので、ドルに対する為替レートが安くなれば、GDPは目減りし、順位を落とすことになる。それがモロに表れたのが2023年の日本のGDPだったと言える。
日本円建てで5.7%も伸びた名目GDPは、ドルベースに換算すると1.2%のマイナスになってしまう。専門家の中には「行きすぎた円安」によって実態以上にドル換算したGDPが小さく見え、実態を表していない、という人もいる。多くの為替専門家は、2024年は円高方向に振れると予想しているが、その根拠は「日米金利差」。米国のインフレが終息し、米国の金利引き上げが終わっただけでなく、今後、引き下げに転じる可能性があるとする一方、日本はマイナス金利を解除するので、今年は金利差は縮小する、だから円高に触れるというわけだ。
世界の中央銀行が通貨量を増やしたコロナ禍
もっとも、そうした「円高予想」にもかかわらず、昨年末から年明けの為替相場はなかなか円高方向に進んでいかない。昨年末には一時、1ドル=140円台を付け、年明けは1ドル=130円台に突入かと思われたが、ジリジリと再び円安になり、1月中旬には1ドル=147円まで戻している。為替専門家が言う「円高」も、最近は1ドル=130円が良いところで、2年前の1ドル=115円という水準に戻るという予想をする専門家はほとんどいない。仮に1ドル=130円になったとしても、本来は、到底「円高」とは呼べないレベルにまで日本円の通貨価値は下落していると見るべきだろう。
この通貨価値の下落が株高の理由と見ることもできる。新型コロナ対策で世界の中央銀行は、お金を刷ってばらまくことで景気の底割れを防ごうとした。経済活動が止まったら、1929年の世界大恐慌のような猛烈なデフレに襲われかねない。そこで通貨量を一気に増やすことで、経済縮小を防御したわけだ。これは一定の効果をあげたと見ていい。