投機ブームから一転、無価値になったNFT

パーティー帽をかぶったまま目を潤ませるサル。日本刀を凜々しく肩に担ぐ女性剣士。それに3Dメガネをかけたミミズクのような鳥……。いずれも一昨年から昨年にかけ、仮想資産として流行したデジタル・アート「NFT」だ。

NFTブームに乗り、米人気歌手・ジャスティン・ビーバーが2022年1月に130万ドル(1億5000万円)で購入した「サルの絵」は、マイナス95%の大暴落となっている。マドンナなど著名人も、巨額の含み損を出しているのが現状だ。

NFTは平たくいえば、デジタルで証明された所有権だ。主にコレクター性の高いデジタルアートなどについて、その所有権をネット上で売買。購入・売却履歴をブロックチェーン技術で記録し、現在の所有者を証明する。将来の値上がりを見込み、実体のないデジタル作品に巨額の値が付いた。

ブームが去ったいま、現状は厳しい。ビットコインやイーサリアムなど暗号通貨には復調の兆しが見えるが、NFTは一部をのぞきほぼ無価値になった。現在では全NFTの95%に値が付かない状況だ。かつては数多の種類が取引されていたが、現在では取引額の大半をたった2種のNFTが占めるまでに市場規模は縮小。復調の気配は見えない。

2018年11月12日、ニューデリーのインド工科大学(IIT)で学生と交流しながら身振り手振りをするツイッターのCEO兼共同創業者のジャック・ドーシー
写真=AFP/時事通信フォト
2018年11月12日、ニューデリーのインド工科大学(IIT)で学生と交流しながら身振り手振りをするツイッターのCEO兼共同創業者のジャック・ドーシー

「サルの絵」に飛びついた人々は大損害を被った

NFTは時に、同じブロックチェーンを使うビットコインなどの暗号通貨と混同される。NFTの場合は大量に出回る通貨と異なり、特定のアート1点の所有権を示している。唯一無二の「替えのきかない」資産を対象とすることから、「非代替性」トークン(NFT:Non-Fungible Token)と呼ばれる。希少性から投機熱が過熱した。

NFTをめぐる投機バブルは2021年から加熱したが、いまや崩壊。著名人を含む多くの投資家が大きな損失を被った。投機に燃えた市井の人に加え、セレブも例外ではない。

米CNBCによると、ジャスティン・ビーバーはアート作品群『Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)』のうち、ある1点のイラストに投資。ファッションアイテムを身にまとったサルが、小憎たらしげな表情を浮かべるイラストだ。

ボアード・エイプ作品群は、米NFT制作スタジオが表情やファッションの異なる1万点のバリエーションを制作し、それぞれの所有権を示すNFTを発行(「鋳造」と呼ばれる)した。