世界的にも目立つほどの日経平均株価上昇

日本の株価上昇が勢いづいている。日経平均株価はバブル崩壊後の高値を連日更新し、34年ぶりに3万6000円に乗せた。1989年12月29日に付けた3万8915円87銭の史上最高値更新も視野に入ってきた、という声も聞かれる。

日経平均株価を示すモニター=2024年1月17日午前、東京都中央区
写真=時事通信フォト
日経平均株価を示すモニター=2024年1月17日午前、東京都中央区

2023年の年間を通じても、世界の中で日本株は気を吐いた。日経平均株価の年間上昇率は28.2%。英国FTSE100指数の3.8%や米国ニューヨーク・ダウの13.7%、欧州ユーロ・ストックス指数の15.7%、ドイツDAX指数の20.3%を大きく上回った。好景気が続いた米国のナスダック総合指数の43.4%という上昇率には及ばなかったものの、世界的にも大きく目立つ存在だった。

世界の中でも株価が大きく上がっているのだから、日本経済は絶好調なのかというと、どうもそうではない。経済力を示す最も主要な指標であるGDP(国内総生産)は、2023年にドイツに抜かれて世界4位に転落することがほぼ確実になった、と報じられている。かつてGDP世界2位だった日本は中国に抜かれて久しく、その背中も見えなくなったと思ったら、今度は人口がはるかに少ないドイツにも抜かれることになったわけだ。

物価上昇が見た目のGDPを押し上げている

もちろん、中国など人口が多い国のGDPが大きいのは当然とも言えるが、人口1人当たりのGDPでみても、日本はイタリアにも抜かれてG7(主要7カ国)で最下位となった。もはや「経済大国」などとは言っていられない事態に直面している。

株価は世界の中でも上昇が目立つのに、日本経済はすっかり落日の様相を見せているというのは、どうにもふに落ちない。GDPの順位低下と株価上昇。この一見矛盾する動きは、なぜ起きているのか。

1月15日にドイツ連邦統計局が発表したドイツの2023年のGDPは前の年に比べて6.3%の増加だった。日本の2023年のGDPは来月にならないと数値が発表されないが、概ね590兆円程度と見られる。前の年と比べると5.7%の伸びということになる。

もっともこの伸び率は、「名目」と呼ばれるものだ。物価が上昇している分、消費も生産も数値が上振れする。これを修正するために、物価上昇分を差し引いたものが「実質」だが、実質のGDP成長率は日本の場合は1.5%程度になると見られている。つまり、4%程度の物価上昇が見た目のGDPを押し上げているのだ。

これはドイツも同様で、実のところ、ドイツの実質GDPは0.3%のマイナスということになる。6%以上の物価上昇分が見た目のGDPを押し上げているのだ。物価上昇を引いた実質で見る限り、日本の成長率の方が、ドイツをはるかに上回っている。だから、日本の株価上昇率が高い、と考えることもできる。