ビジネスで大事なのは売上げか利益か

逆に、どんなバカバカしいようなものでも、他の人がつくれないものであれば利益は出る、というのがビジネスの現実。この基本中の基本が意外と見過ごされている。

というのは、これが利益ではなくて「売上げ」になると、話がぜんぜん別だからだ。

売上げというのは、要は世の中にたくさんのニーズがあるかどうかで決まるから、努力して世のため人のためになる商品を開発すればいい。そうすれば、その商品は非常に広く普及して、当然のこと売上げも大きくなる。

しかしそれを他でもつくれたとしたら、いつか必ず「儲からない」という事態に陥ってしまうのが、競争原理というものなのである。

これは当たり前のことなのだが、世の中でかなり優秀な経営者とされている人たちであっても、どうしても最後のところで誤解、あるいは錯覚していることが多い。

設備投資をして、社員たちが努力してすごい商品を開発したのに、どうして儲からないんだと嘆く。気持ちは痛いほどよくわかるけれど、それは他の会社もやっているから、こと利益となると難しいですね、と答えざるをえないのである。

したがって、戦略を考えるときには、相対性というものが重要になる。

実際、戦略論を勉強してみるとすぐわかるが、どんなテキストにもみな「自分の力」の他に、必ず「競争の中での自分の位置づけ」や「環境の変化」や「時間の経過」などを見なさい、戦略はこういうものを見ることでできるんです、と教えている。

書き方としては、〈5つのFに注目せよ〉などと著者によっていろいろ工夫されているが、いいたいことは同じ。効果的な戦略を立てるためには相対性重視の視点でいけ、ということなのである。

ビジネスは売上げではなく、ほんとうは利益が大事だということ。そのためには商品の質ではなく、あくまで差別化要素が必要だということ。ほとんどの戦略論がここを出発点にしていて、私もそれで正解だろうと思っている。

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捨てる技術といっても間違いではない

そして②の資源配分だ。

これもごく当たり前の言い方で、部分的にはいろんなところに出てくるが、なかなか理解されにくいところがある。

たとえば、戦略からは発明は生まれてこない。戦略は万能ではないから、戦略を立てたからといって、それだけで会社の資金力が増したり、技術者の商品開発能力がアップしてくれるわけではないのである。

しょせん戦略というのは、いま会社が持っているものをどう組み合わせるか、でしかない。どこかから手を抜いて、そのぶんをどこかに集中させることで、結果としてより大きな成果を得る。いってみれば、戦略の本質はこれだけのことなのだ。

そういえば、少し前のベストセラー本に『「捨てる!」技術』というのがあった。戦略の要諦もまた、一面では捨てる技術だといっても間違いではない。

だから、何かをするためにそこにヒトやカネを当てたら、必ず他のどこかを捨てなければならなくなる。よくありがちな、アイデア満載で、あれもこれもみんなやりましょう、というのは戦略ではないのである。

ということは、企業体力がない、人がいない、お金がないというなら、そういう会社ほどより戦略が必要になるわけだ。

これが大企業だと、戦略をある程度までルーズに考えていても、結果オーライということがありうる。