経営は「直感」と「論理」のどちらを重視すべきなのか。戦略コンサルタントの笠原英一氏は、「経営の本質は、不確実性のなかにおける意思決定。意思決定における不確実性を減らしその質を高めるために、戦略的アプローチは必要不可欠だ」と指摘する――。
※本稿は、笠原英一『改訂版 強い会社が実行している「経営戦略」の教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
結論を下す方法には2種類ある
“直感経営”を英語に訳すと、intuition based managementとでもなろうか。しかしながら、この直訳では、日本語のもっている、“主観と客観の循環から生まれる本質を見極めたうえでの判断に基づく経営”というニュアンスがそぎ落とされてしまう。ましてやguts based managementとかにしてしまうと“経営は気合いだ!”になってしまうかもしれない。
などと考えていたら、意思決定に関するSystem1とSystem2の理論を思い出した。ノーベル賞を受賞したDaniel Kahneman氏の研究成果であるが、以下のような内容であったと記憶している。
人間が結論を出す方法として2つの種類がある。ひとつがSystem1。これはシンプルに言うと、時間やエネルギーをさほどかけず、直感に基づいて意思決定するスタイルを意味する。直感に基づくため、先入観や偏見が入る余地はおのずと高まる。しかし、時間とエネルギーを省くことができる。
それに対してSystem2は、時間をかけて熟考して結論を導いていう意思決定である。データ、数字、式で導かれた結論のほうが、人間の直感に基づく判断よりも優れているという考え方である。しかし、時間とエネルギーがかかる。