これからの時代に必要な、戦略的アプローチとは

戦略的アプローチは、大きく2つの階層に分けることができる。ひとつは、企業全体を単位に、成長領域の選択とその領域間での資源配分をテーマとする企業戦略(corporate strategy)。もうひとつは、企業に含まれる特定の事業の競争優位性と収益性の拡大をテーマにした事業戦略(business strategy)である。

企業戦略の本質は、企業の置かれた経営環境と自社がそれまでに構築してきた経営資源をベースに、企業が社会に提供する価値や社会的役割としての企業理念を認識し、中期的に達成しようとしている目標やそれを実現していくための大まかな成長方向としての事業領域とそこに含まれる戦略立案の単位となる事業を定義して、そのうえで事業に資源を最適配分しながら経営資源を拡大していくプロセスと考えられる。

この企業戦略に対して、事業戦略は、投入された経営資源を事業ごとに展開し、競争優位の構築と市場におけるニーズの充足を果たしながら、収益、利益を実現し、究極的には経営を拡大していくプロセスと考えられる。企業戦略のメインテーマが「経営資源の配分」であるのに対して、事業戦略のそれは「経営資源の活用」なのである。

戦略的アプローチは15のステップから成る

最後に、『改訂版 強い会社が実行している「経営戦略」の教科書』で解説している戦略的アプローチのフローを紹介しておきたい。

①企業理念の明確化、②経営環境・経営資源分析、③企業目標の設定、④事業領域(製品・市場)の定義、⑤資源配分、⑥事業ビジョンの明確化、⑦現状分析、⑧事業目標の設定、⑨事業範囲(製品・市場)の設定、⑩競争戦略、⑪マーケティング・市場戦略、⑫バリュー・チェーン、⑬組織・制度、⑭ブランド価値、⑮事業価値の15から成るステップである。

笠原英一『改訂版 強い会社が実行している「経営戦略」の教科書』(KADOKAWA)

この15のステップを予算編成や中期系計画策定、もしくは年度計画の立案、更には個別のプロジェクトを企画する際に活用いただくことで、System2の戦略的アプローチを実践することが容易になる。

また、このステップを組織やチームで理解・実践していただくことで、いろいろな副次的な効果も得られると思う。経営者に対しては新たな気づきをもたらすものであり、ミドルマネジメントには、自分の構想力を経営者の視点に近づけるものであり、現場の若手には、経営の本質を効率よく習得して、将来のリーダーとしての自覚を促してくれるのである。

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