ビッグデータにより戦略的アプローチが有利に

そろそろ、直感経営と戦略経営のテーマに戻してコメントしたい。近年、テクノロジーによって、従来考えられなかった量のデータが戦略的に使える状態になりつつある。音楽、写真、ビデオ、地図、文章、意見、フェイクニュースなども含めて、ありとあらゆるものが、各種センサー、端末を通して世界中でやり取りされる時代である。そのデータをAI、機械学習を通して、使える情報にすることが経営の現場でも可能になりつつある。

こうした現状をかんがみるに、現代においては、System1の直感に基づく判断のメリットが相対的に減ってきており、同時にバイアスのデメリットが大きくなっていると考えられる。逆にSystem2の分析的なアプローチのコストは、時間的にも、経済的にも、精神的にも、相対的に大きく下がっている。

System1(直感)とSystem2(戦略)という2つのアプローチを比べた場合は、戦略的アプローチのメリットが、明らかに大きくなっている。

データを活用しても最後に必要なのは「気合い」

しかしながら、経営の本質は、不確実性のなかにおける意思決定である。どんな時代になっても、経営者の直感に基づく意思決定は必要不可欠である。

経営環境を構成する①顧客・市場、②競合・業界、③自社資源、④マクロ環境の4つの要素に関しては、デジタル技術をフル活用しても、何らかの不確実性が残る。従って、最後の最後には、guts feeling(気合い)による決定が必要になっている。

戦略的アプローチとは、不確実性の中における意思決定をする際の不確実性をなるべく少なくして、直感に基づく意思決定の質を高めていくための方法論なのである。

従って、経営における「直感」と「戦略」はどちらか片方があれば良いというものではなくて、いずれも必要不可欠なものなのである。