韓国で少子化が急速に進んでいる理由

韓国側の記事では、このデータを「約50年で、生まれる赤ちゃんの数が4分の1になった」と表現する文章が、よく目につきます。ちなみに、地域別に見ると、特に首都ソウルの合計出生率が低く、2022年の合計出生率は0.59人という、とんでもない記録を出しました。2023年4~6月期では、0.53人です。

合計出生率の減少について世界的に同じ問題で悩む国が多いのは事実ですが、なぜこんなに韓国だけ「ずば抜けたスピードで」減少しているのか。それには理由があります。多すぎて困るほど、あります。専門家からも多くの指摘が出ていますが、まず、無難な指摘とされるものをいくつか取り上げてみます。

「仕事と子育てを並行するのが難しいこと」「全般的な経済的環境が思わしくないこと」「ソウルなど首都圏への集中がすごいこと」「子供のほとんどが何かの塾に通うなど、不思議なほど高い私教育熱(そのための費用負担)」、そして「住宅が高すぎること」などなどです。

結局、ある程度資産を蓄積できている人ならともかく、若い人たち、青年たちは、結婚したくてもできない、家庭を持つことの難易度が高すぎる、つまり子供をつくることが「無理ゲー」に挑むような状況だから、人口が減少するしかない、というのです。

首都圏にヒト、モノ、カネが集中しすぎている

これは正論そのものではあります。「そうじゃない」と言うことはできないでしょう。ただ、分かっていてもどうにもならないのもまた事実です。いくつか少しだけ詳しく見てみます。

韓国では、2022年末基準で、全体人口のうち半分を超える50.3%(2605万人)が首都圏に住んでいます。日本では首都圏というとかなり広い範囲を指しますが、韓国は首都圏といっても、ソウルと京畿道(キョンギド)、仁川(インチョン)だけです。

他にも首都圏集中化をめぐって悩んでいる国は多いですが、それでも全体人口において首都圏人口比率は、イギリス(12.5%)、フランス(18%)、日本(28%)に比べて圧倒的です。どれだけよくできている都市でも、人が集中しすぎると、全員の教育、働き口、老後をカバーすることはできません。

全国1000大企業のうち529社がソウルにあり、売上基準で見るとさらに集中が激しく、ソウルが65.4%に上ります。他の首都圏の京畿道(182社・売上基準19.7%)と仁川(40社・同2.6%)を合わせると、1000大企業のうち751社(87.7%)が首都圏に密集していることになります。もうほかの地域には、「大企業は『ない』のが普通」と思ったほうがいいでしょう。