アマゾンのミッションを事前に説明するプロジェクトが開始

2018年以降、各国が欧州のような事態になることを避けるために、各国においてアマゾンのミッションやビジネスモデルについて事前に能動的に規制当局や政策立案者に説明するという全社的なプロジェクトを展開することになった。何か問題が起こってから事後的に受動的に対応するのではなく、日頃から各国政府や政府に対して影響力をもっている人たちの理解と信頼を得ることが重要であると再認識したのである。

日本でも、2019年11月に、衆議院第一議員会館において、「オンライン販売で成長する全国のきらりと光る小規模事業者応援展」を開催し、各地の道の駅や物産展で販売をしている販売事業者の方々がAmazon.co.jpを通じても事業を拡大されていることを、国会議員や秘書に訴求したりした。

辛抱強く事実を伝え、社内にフィードバックしていく

渡辺弘美『テックラッシュ戦記 Amazonロビイストが日本を動かした方法』(中央公論新社)

テック企業のビジネスモデルや提供する商品やサービスにより、社会的な不安や不信がうまれ、それらが積み重なることによってテックラッシュが生じる訳である。それらを放置すれば、政治的な緊張から新たな規制による政府の介入が行われるだけでなく、最も大事な消費者からの信頼を失ってしまうことになりかねない。テック企業の公共政策チームとしては、誤解に基づく外部からの批判に対しては辛抱強く事実を伝え、真摯しんしに受け止めるべき否定的な見解に対しては社内にその声をフィードバックし、商品やサービスに何らかの調整を加えることが必要になる。

また、否定的な批判の声に対応するだけではなく、影響力のある企業は社会的責任を果たすべきであるとの要請にも応える必要性が高まっている。サプライチェーンを含めた持続可能性、省エネルギー、人権デューデリジェンス(適正な評価手続き)、ギグワーカーの労働条件など、社会的問題への取組が一層要請されていることを社内に周知して回る役目もある。テック企業の公共政策チームは、会社の命運を左右する重要な役割を担っていると言っても過言ではない。

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