牛乳なしの日があってもよいのでは
米どころで知られるある地域では、和食と牛乳は合わないという考えから、「2時間目と3時間目の間の20分休みに牛乳を飲んで、給食の時間は水を飲む」という取り組みをしたことがありました。しかし、急いで牛乳を飲んで、すぐに校庭や体育館で全力で遊ぶため、吐いてしまう子もいたそうです。
また「そもそもどこで牛乳を飲むのか」「飲む前の手洗いは?」「飲んだあとにどうやって片付けるのか」「休み時間に行なうには忙しすぎる」などの意見が噴出しました。
牛乳の温度管理の問題も懸念されますし、衛生的な観点からも運用が難しかったようです。この取り組みは、現在廃止となっています。
そもそも給食のルールは、学校給食法を踏まえつつ、細部は自治体で決めてよいことになっているのは前述の通りです。そこで、文京区の栄養士が集まる会議で、「思いきって牛乳なしの日を作ってもよいのでは?」と議論をしたことがあります。
それで何かが大きく変わったわけではないのですが、区としても和食給食の推進を行なっていたこともあり、年に一度、11月24日「いい日本食の日」に区内すべての公立小中学校で、牛乳の代わりに日本茶を提供するということになりました。
ただし、急須でいれるわけではなく、パック入りの緑茶をストローで飲むというスタイルです。「これでは日本茶を出す意味がないんじゃない?」という意見もあり、提供日を増やすことにはなっていません。
給食の牛乳は、今が過渡期なのかもしれません。
なぜ給食に地域差があるのか
みなさんは給食で「冷やし中華」や「冷やしうどん」など、冷たい麺類を食べたことがありますか? 「夏の定番だった」と答える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、私の勤務する文京区の学校では冷たい麺類の提供は禁止されています。
その理由は「温度を下げる(冷ます)間に食中毒のリスクがある」というものです。給食について「そんな給食のメニュー、自分の地域では出なかった」「私の学校ではよく出ていたよ」という話で盛り上がることがありますが、その地域差は、自治体の定める安全基準の差に起因している場合もあるのです。
ある小学校のサバから腸炎ビブリオという食中毒菌が検出された場合、その自治体内の学校すべてでサバの使用が少なくとも数年は禁止になる、ということがよくあります。
たとえ契約している水産加工業者が違っていたとしても、「念のために」というわけです。
川や道路を挟んだだけの近い距離であっても、県境や市境など行政区分が違えば「東側の地域は給食でサバが出る」「西側の地域では出ない」という一見不可解な現象が起こるのは、このような理由からです。