上から下までプロがいない

【中野】そういう処女信仰みたいなね、若くて何も知らない子を俺が育ててやった! みたいなことがエンタメとして成立するというのは、日本独特なんですかね。

【デーブ】普通そこまでニーズないんですよ。アイドルはいますよ? いろんな国に。でも日本は世界一じゃないかな。

【中野】日本の場合、歌舞伎からそういう感じだったのかもしれないですよね。幼い頃から舞台に立って、成長するに従って大きな名前を襲名していって。

【デーブ】話を戻せば、それで2〜3年とかその部署にいて異動、役人もそうですよね。浅く広くいろんなことを学ぶんだけど専門家、プロにはならない。ひとつには汚職を防ぐためでもあるんですよね。長くいると取引先や業者となあなあになっちゃうから。その防止の意味でもあるんでしょうけど。

【中野】テレビ局でも突然そういうことありますよね。

【デーブ】制作現場にいたこの人がいきなり営業に行ってどうするんだよ? とか思うよね。馬鹿じゃないのかなと思うけど、接待来てくれたら盛り上がるとか思ってるのかな。

【中野】まあ日本の場合、経営陣もいわゆる経営のプロというわけじゃないから。下から上がっていって経営陣に入るから、えらくなる人はいろんな部署見させられるみたいなところはあるみたいですけどね。

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従業員の教育にお金をかけない日本企業

【デーブ】だから日本はプロ育てないの? 一般企業は。

【中野】プロ育てない、プロいらないの。私、統計見たな、日本の企業が従業員の教育にかけるお金の割合というのが、先進諸国で最低だったんですよね。厚生労働省が2018年に出した「労働経済の分析」っていう白書か。日本って突出して低いんですよ。

【デーブ】だろうね、そういう印象。

【中野】アメリカの20分の1、ヨーロッパの10分の1。プロ作らない制度だから、やっぱり従業員にお金使わない。

【デーブ】そんなに。

【中野】それで慌ててかわからないけど、岸田内閣になって去年か、「未来人材ビジョン」と銘打って「企業も社員教育に力を入れましょう」とか言い出したんですよね。

それっておそらくデンマークとかイギリスとかが「社員教育に力を入れなさい」ってやって成功したからなんでしょうけど、デーブさん仰ってたみたいに、日本と欧米の働き方って違うじゃないですか。向こうは雇用の仕方が「サラリーマン」みたいなふわっとした形じゃない。