後悔は「安堵」に変えることができる

また、「せめてもの幸い」思考は、配偶者選びの失敗など、重大な後悔にも効果があるが、後悔の四つのカテゴリー(基盤に関わる後悔、勇気に関わる後悔、道徳に関わる後悔、つながりに関わる後悔)に属さない厄介な後悔に対処するうえでも有効だ。

ダニエル・ピンク『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)

たとえば、あなたが最近新しい自動車を購入し、早くもその選択を後悔していて、別の自動車を買えばよかったと思っているとしよう。それでも、あなたが買った自動車が安全で、十分な機能を備えていれば、長い目で見た場合の幸福と満足に及ぼす悪影響はほとんどない。実際、どのような自動車を買ったとしても、それが質素な車だろうと、ゴージャスな車だろうと、人はすぐに慣れるものだ。

したがって、後悔から将来への教訓(「次は購入する前にもっと注意深く情報収集しよう」)を引き出そうと努めるのに加えて、「せめてもの幸い」思考も実践すればいい。場合によってはもっとひどい結果になっていたかもしれない、と考えてみるのだ。「少なくとも、悪い買い物ではなかった」「トランクの狭い車を買わなかったのは、幸いだった」「金額に見合った商品ではあった」などと考えよう。

後悔したら、「せめてもの幸いは…」と自らに問う

「せめてもの幸い」思考は、後悔を安堵あんどに変える効果を発揮する場合がある。その効果は、ときとして非常に大きい。しかし、「せめてもの幸いは……」という考え方は、「もし~~していれば……」という考え方とは比較にならないくらい、自然には意識に上りにくいため、必要に応じて意識的に呼び起こさなくてはならない。

「せめてもの幸い」思考は、抗生物質に似ている。私たちは、ときには抗生物質を飲んで心の免疫システムを強化し、ある種の有害な感情をはねのけることも必要なのだ。抗生物質は、頻繁に飲みすぎると、次第に効きにくくなる。けれども、賢く使えば、健康を保つのに役立つ。

行動したことへの後悔により気持ちが沈んでいるときは、自分にこう問いかけよう。

*いま後悔している意思決定がもっとひどい結果を招いていた可能性はないか。
*この後悔に関連して、一筋の明るい光を見いだすとすれば、それはどんなことか。
*次の文を完成させるとすれば、どうなるか。「せめてもの幸いは……」

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