過去の失敗を忘れられないときは、どのように立ち直ればいいのか。米ベストセラー作家のダニエル・ピンクさんは「行動したことの後悔よりも、行動しなかった後悔のほうが修正することは難しい。だがそれも、物の見方次第でうまく立ち直ることができる」という――。

※本稿は、ダニエル・ピンク『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

オフィスの窓から外を眺める中年ビジネスパーソン
写真=iStock.com/Tom Merton
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「やってしまったこと」への後悔は取り消せるのか

たとえば、あなたがなんの罪もない親友の頬をいきなり平手打ちしたり、葬式の場で故人について意地の悪いことを遺族に言ったりしたとする。あなたは、おそらくその行動を後悔するだろう。たいていの人はそれを後悔する。けれども、エンターテインメント業界は、こうした軽率な行動に、テレビ番組の企画の種を見いだす。

『ヘットスパイトム』は、オランダで一九九三年から一二年間、数シーズンにわたって放映されたテレビ番組。「ヘットスパイトム」とは、オランダ語で「ごめんなさい」という意味だ。番組には二人の人物が登場する。ひとりは、後悔をいだいている人。たとえば、親友にビンタをしてしまった人などだ。もうひとりは、ビンタされた友人など、不当な扱いを受けた側の人である。

番組開始当初の構成では、たくさんの観衆を集めたスタジオで、後悔している人がソファに座り、トークショーのような形で自分の後悔について司会者に打ち明ける。そのあと、その人物は司会者と一緒にビデオを見る。そのビデオの中では、番組のプロデューサーが、不当な扱いを受けた相手に会いに行き、その人物の思いを聞き、謝罪を受け入れるつもりがあるかと尋ねる。そのときお詫びの花が贈られるのは、いかにもオランダらしい。

「やらなかった後悔」よりも、その後悔は大きい

謝罪を受け入れた場合、被害者は番組終盤でスタジオに登場し、謝罪者と対面する(のちのシーズンでは、謝罪者が被害者の家のそばで待っているという設定に変更された)。こうして、過去の行動が修正されて、涙が流され、抱擁が交わされる。

後悔研究の権威である社会心理学者のマルセル・ズィーレンベルグら、三人のオランダ人研究者は、『ヘットスパイトム』の二シーズン分の内容を分析し、人々がどのような後悔を取り消したいと思っているかを調べた。すると、この番組でも社会全般と同様、行動しなかったことへの後悔よりも、行動したことへの後悔を取り消そうとする人が多かった。人は「やらなかったこと」よりも、「やったこと」を修正しようとする傾向があるのだ。

その理由はいくつもある。行動したことへの後悔は、具的な出来事をきっかけに生じる場合が多く、しばしば強烈な感情を伴うため、すぐに対処したくなる。それに対し、行動しなかったことへの後悔は、もっと漠然としていて、ただちに強烈な感情を引き出さない場合が多い。

それに、行動しなかったことへの後悔はその性格上、往々にして取り消すことが難しい。二〇代になって、高校時代にもっと勉強すればよかったと後悔したとしても、高校生活をやり直すことはできない。できるのは、未来の行動を変えることだけだ。