実の兄が「角会長は辞めるべき」と断罪

企業における人権問題には、過労死、長時間労働、パワハラやセクハラなどのハラスメント(嫌がらせ)、不当な差別などがあります。宝塚歌劇団の運営で、人権問題のチェックは行われていたのでしょうか。

企業で発生したパワハラ、セクハラなどの人権問題で、社長が辞任するケースも起きています(共同通信社での事例)。宝塚歌劇団の場合は、いじめ、パワハラ、長時間労働などで人命が失われています。

阪急阪神ホールディングス会長兼グループCEOの角和夫氏の実の兄は弁護士で、宝塚歌劇団の一連の対応を「人の道に外れている」と断罪し、弟である角会長は辞任すべきだ、と『週刊文春』で発言しています(12月14日号)。

角会長は12月1日付で宝塚音楽学校の理事長を退任しましたが、それだけでは不十分です。2003年に阪急電鉄の社長になって以来、20年間の長期政権を続けてきた角会長だけでなく、宝塚歌劇団を運営している阪急電鉄の社長であり、阪急阪神ホールディングス社長の嶋田泰夫氏も責任を取らざるを得ないでしょう。

社外取締役が人権問題をチェックすべき

阪急阪神ホールディングスには、慶應義塾大学特任教授の遠藤典子氏、弁護士の鶴由貴氏、西日本電信電話社長だった小林充佳氏、元検事で現在弁護士の小見山道有氏、京都大学大学院特任教授で、社会健康医学や健康経営の専門家である髙橋裕子氏の5人の社外取締役がいます。

宝塚歌劇団の劇団員やスタッフの人権問題、健康管理をチェックして、阪急阪神ホールディングスが、歌劇団の人権問題の解決に全力で取り組むように、社外取締役の責務を発揮すべきではないでしょうか。

経済産業省は、会社法およびコーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえて、社外取締役の役割や実務について、「社外取締役の在り方に関する実務指針」を2020年7月に策定しました。そのポイントを概要版で、4ページの文書にまとめています。

「社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督である」とし、「必要な場合には、社長・CEOの交代を主導することも含まれる」と謳っています。

詳細版は「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」に記されていますので、参考にしてください。