薬が効いて痛みがスーッと消えた

今夜は身体も身軽になり、楽に眠れるはずでした。しかし、深夜になるにつれて、また傷跡の痛みが気になってきました。しかも、明らかに昼間の痛みより強く感じるのです。気を紛らすことができない夜の方が、より痛みを敏感に感じやすいのです。このとき、もう消灯時間は過ぎています。夜勤の看護師さんはナースコールしないと、だいぶあとの時間まで見回りには来ないでしょう。1時間くらい悩んだ末、このままでは眠れない。ナースコールを押すしかないと意を決したのです。

「廣橋さん、どうしました?」
「すみません、また痛くなってしまって……」
「あら、我慢しないでいいんですよ。いま薬を持ってきますね」

ロキソプロフェンを飲んだあとは、スーッと痛みが楽になり、ようやくウトウト眠れるようになったのです。もっと早くナースコールすればよかったと後悔。

いつも患者さんに「痛みは我慢しないで、すぐ薬を飲みましょう」としつこく説明してきた私が、いざ患者になると我慢してしまっていたのです。「夜に眠れないくらいの痛みは、確実に緩和しなければならない」と若手医師に指導してきた私が、夜に痛みで眠れなくても我慢してしまっていたのです。患者の立場になって初めて、我慢してしまう患者の気持ちを理解することができました。

痛みを我慢してもいいことなんて何もない

さすがに次の日から、痛み止めの使い方を改めました。

看護師さんにも相談して、痛くなりだしたタイミングで早めにロキソプロフェンをもらいました。とくに夜には痛みが強くなる実感があったので、寝る前には前もってロキソプロフェンを飲むことにしました。この作戦は功を奏し、次の日の夜は快適に眠ることができたのです。

さて、ここで私が取り入れた痛みとの付き合い方について、もう少し詳しく紹介します。

まず、痛み止めは飲んでもすぐには効いてきません。薬の種類によって異なりますが、少なくとも30分は効いてこないでしょう。痛みを我慢してから飲んでも、効いてくるまでの間はさらに我慢が続くことになります。ですから、うまく痛みを和らげるためには、痛み始めに飲んでおく必要があるわけです。患者さんが痛み止めをよいタイミングで使えない理由は、主に2つあると思っています。

まず1つ、これは日本人特有のものかもしれませんが、「痛みとは多少我慢すべきもの」「痛み止めは使わずに済めばその方がいい」と思っている人が多いことです。これは私自身が陥った、無意識に我慢してしまう性格もあるのかもしれませんが、やはり我慢はよくありません。痛みを我慢することで、睡眠や仕事などやりたいことに集中できなくなりますし、気持ちも落ち込みます。さっさと痛みを和らげて、時間を大切に使うべきです。

写真=iStock.com/shapecharge
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