医師に「痛いときには、この痛み止めを飲んでください」と言われたとき、どれだけの痛みで服用すればいいのか。緩和ケア医で自身もがんと診断された廣橋猛さんは「痛みは火事と同じ。火のように痛みも燃え広がって強くなるのに、なぜか痛みのときは水をかけるのを待ってしまう患者さんが多い。痛みがあったら、すぐに痛み止めを使ってほしい」という――。

※本稿は、廣橋猛『がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える「40歳からの健康の考え方」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

患者に薬の説明をする医師
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痛み止めをもらうのを遠慮してしまう理由

甲状腺乳頭がんの手術で入院していた時のことです。

夕方になると、また痛みが出てきました。昼に飲んだロキソプロフェンの効果が切れてきたのでしょう。もし、手元に薬を置いておいたら、躊躇せずに飲んでいたはずです。ただ、いま飲むためにはナースコールを押さなければなりません。

ちょうど看護師さんたちが、日勤から夜勤へ交代する時間帯。いまナースコールするのは迷惑になるかもしれない。もう少しすると、夕食を配りに夜勤の看護師がやってくるにちがいない。そう思って、小1時間は我慢することにしてしまいました。スマホをいじったり、テレビを観るなどして気を紛らせます。

ようやく夕食のタイミングで、ロキソプロフェンをもらうことができました。看護師さんには我慢していた素振りを見せず、いちおうもらっておきますくらいの感じで薬を受け取った私。飲めばすぐに効いてきて、もっと早くもらえばよかったなぁと後悔する始末。気分もよくなって、食事も完食。昨夜はあまり眠れなかったこともあり、早めに床に入ることにしました。