国民党の副総統候補は「台湾の池上彰」
頼氏が副総統候補に指名した蕭美琴氏は、親米路線をとるにはうってつけの人物だが、台北では「エリート臭がする」と受けが悪い。
柯氏の副総統候補、呉欣盈氏は、財閥創始者の孫娘とあって、民進党や国民党と比べ予算が少ない第3勢力の台湾民主党の「お財布」としては貴重な反面、蕭氏ともどもアメリカとの二重国籍疑惑が報じられ、現地での評判は良くない。
一方、候氏のランニングメイトである趙少康氏は、テレビやラジオのキャスターとして、日本で言う池上彰氏(池上氏も同じ73歳)のように名前が売れている。
高齢で、かつて、中国との再統一を主張する新党に属していた点はマイナスだが、著名なメディア人であることが、地味な候氏を補完している。
加えて、親米派という点も、「候総統になれば、中国に擦り寄るだろう」との見方を中和させ、「親中というよりも親米」という、台湾の有権者に最も受け入れられやすい空気を作り出すのにひと役買っている。
親中派になるか、対中強硬を貫くかの戦い
このように、世論調査結果を見ても、副総統候補の顔触れから考えても、緑(民進党の頼氏)が勝つか、藍(国民党の候氏)が勝つか、まだ断言できない。
そこで、筆者は立法院を尋ね、蔡総統や頼氏の側近で知日派の郭国文・立法委員(国会議員)に話を聞いた。
【筆者】頼氏と候氏の戦い、現状をどう見ていますか?
【郭氏】正直なところ、頼氏と候氏の支持率の差が5ポイント以下というのは本当に少ないと思っています。選挙までの1カ月弱で何が起きるか分からないと思っています。頼氏が勝っても、同時に行われる立法院選挙で民進党が負ければ政策が前に進みませんので、両方勝つことが大事です。
1つ、確実に言えることは、どちらが勝つかで中国との関係はまったく変わってくるということです。
候氏が勝てば、台湾は国際社会の中で親中派になってしまいます。頼氏が勝てば、蔡政権の対中政策が踏襲されますから、これまでの8年間と変わらないと思っています。
【筆者】これから候補者による討論会も行われます。頼氏の陣営にとって重要なことは何でしょう?
【郭氏】民進党は、台湾南部では強いのですが、台湾北部では国民党と五分五分です。その点では、台湾中部での浸透が大事になります。まず南部を固めて、中部にも浸透することができるかどうかが鍵になると思います。
あとは、「棄保」といって、勝てそうにない候補者の支持者が、勝つ見込みのある候補に投票するという動きが生じた場合、支持率で3位に甘んじている柯氏の支持者が、頼氏と候氏のどちらに乗るかでも、状況が変わってきますね。